あそぶ

現実舞台のロールプレイング散策、地域に溶け込む

2014年8月29日 6:40 PM あそぶ--でかける

島根県津和野町をロールプレイングゲームのように散策する企画がある。参加者は、ミッションを与えられ、クリアを目指して考え歩きながら、町の様々な隠された魅力に触れる。発案者の井上寛太さん(22)に聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)

城下町・津和野町を散策する若者たち、課せられたミッションを読んでいる

城下町・津和野町を散策する若者たち、課せられたミッションを読んでいる

――体験プログラムのコンセプトは、ロールプレイングゲームとの事ですが、思いついた背景を教えてください。

井上:結論を言うと「自分の考える魅力を発信する最適な形」を模索した結果です。僕はこの町の観光振興を目指した活動を、この町に移り住んで行っています。そうしていると「町の人と、その生活」を魅力に感じて「この人たちを観光素材にしたいなぁ」と。「会って話せる観光」と言うと分かりやすいかもしれません。

——なるほど、それがどうして「ロールプレイングゲーム」という形になったのでしょうか。

井上:で、そうやって「この人に会ってもらおう」とか「こんな話をしてもらおう」とかを昼夜問わず楽しく企画して調整していました。で、ある程度進んで来ると「こんな状況になったらどうする」などなど、シナリオプランニングのような段階に入るのですが…苦笑

——どうしました?

井上:自分で企画しておいて、こんな事言うとちゃらんぽらんなのですが「あれ?これ、本当に楽しいのだろうか」って、なったんですよ。苦笑

——それはまた急展開ですね。笑 どうしてでしょうか。

井上:僕の考えていた体験ってすごくざっくり言うと、突然知らない人に会って、「はい、楽しい人たちですから話してくださいねー!」というモノで。そんな事ニコニコ言われても、「いやいや赤の他人だし」っていう話なんじゃないかなぁ、と。

どんな人かを説明しても「あ、そうなんですね」で終わる事がほとんどじゃないかと。なんて観光客まかせの投げやりなサービスなんだろうと感じました。長くなってごめんなさい、まだあって「町の人に会ってください」と僕が提案するには「町の人の普段の仕事はどうするの?」という課題もあります。町の人の営業時間内であるのなら、そのサービスにかけた時間の分だけ営業の機会損失になる。

——なるほど。顧客視点と町の関係者の立場に立ったという事ですね。

井上:まさにそうです。ほんっとーに、当たり前の話なのですが。結局「見せたいものをそのまま見せたいように見せる」というのはただの傲慢、津和野に来る人たちと町の人のためのモノになっていなかったんですよ。

もっと踏み込んで言えば「面白い人なんてきっと探せばいくらでもいるよな」と。そうした時に「この津和野町でしか体験できない事」、つまり他の観光地と差別化されているポイントとは何かを改めて見直さなければと考えました。

——また1からのスタートですね。

井上:そうです。それでも、人と生活の魅力は伝えたいし感じて欲しいのは本気だったので、「じゃあどうすればいいのだろうか」と町の人やFoundingBaseのメンバーに相談したり、津和野の歴史を調べたり、夜な夜な1人机に向かって目を血走らせたりしていました。

——そのプロセスでロールプレイングゲームを着想したんですか。

井上:はい。改めて津和野の町について考えていると「やっぱり面白い町だなぁ」と感じて。何が面白いかと言うと「町のコンパクトさ」と「ロケーションの異質さ」です。

観光地とされる場所は歩いて1時間あれば廻りきれるようなサイズで、その中に森鴎外の出生地があったり、聖地とされる教会があったり、僕らの大好きな町の変人たちがいて濃厚だなぁと。さらに、そんな小さくて濃厚な城下町が、山の中にぽっかり空いた穴のように突然出てくるんですよ。木々の間をずーっと走ってるうちに、城下町が現れる。

きき酒に挑むミッションもある、写真左端が井上さん

きき酒に挑むミッションもある、写真左端が井上さん

——少し、分かってきたような気がします。笑

井上:分かってきました?笑 なんだかやすっぽい着想で申し訳ないのですが、そういう津和野の面白いところが、ある時に「なんか、ロールプレイングゲームっぽいぞ!」と発想したんです。ドラクエとかって、延延山やら草原を歩いていると突然城下町が出て来るじゃないですか。

ロールプレイングゲームの発想が出た後はもう具体的な指標があるので速かったです。ゲームと津和野の体験との接合点を思案したり、津和野という現実をいかにゲームの架空の世界に演出して没入させる仕掛けを思案したり。

——6月21日から7月13日で、モニタリングとして、中国地方を中心として20代前半の若者50名がこの企画に参加したそうですね。評判はどうでしたか。

井上:まだまだ、サービスとしての質が中途半端だなと感じました。「感動して泣きそうになった」なんてありがたい言葉をいただいたり、NHKの方が取材に来て全国放送したいただいたりした反面、不安視していた通り「架空の設定を途中から忘れていた」「途中ルールが分からない部分があった」など、遊びとして致命的だなと反省する提言もいただきました。

町の人にも「継続的に続けるために色んな課題を解決していかないとね」と厳しいながら1番重要な指摘もありました。町の人が関係してくると、その分だけ町の方にご迷惑をかけてしまう事になる可能性があるので「人と生活」の魅力を伝えつつ「町の人たちに依存しない」形が必要かなと考えています。これからが本番ですね。いただいた言葉をしっかりサービスの形に繋げます。

——今後はどのような展開を考えていますか。

井上:まず、モニタリングとして提供してきたサービスを10月末に本リリースしようと動いています。モニタリングの期間とはまた異なった形のモノになるかと思います。脳がひからびるまで、サービスのクオリティを向上させていき、津和野を好きになってくれる方々を増やしていこうと考えています。

——楽しみですね!津和野の活性化という点でいうと、このプログラムがどのように影響すればいいと考えていますか。

井上:活性化というと難しいですね…「移住」という事が良く語られますが、移住を狙うという事は考えていません。やはり移住となると、故郷を離れ友人たちと離れお気に入りのお店を離れる、ある種それまでのライフスタイルを捨てる重たい事だと思うので。

このプログラムではまず「津和野が好きだ!」「津和野って面白いね!」と語る若者が増えて、津和野という町が前向きな形で拡がればと思っています。そして町の人たちも「こうすればもっと面白くなるんじゃない?」と色んな提案をして、文化を通して日々の営みが活気づけば嬉しいです。そんなプロセスの中で、津和野の消費が促され、経済力がついてくる仕組み作りを狙っていきます。

■プロフィール
井上寛太(22) 1991年、大阪府うまれ。京都造形芸術大学で「社会とアートの接続」をテーマに、芸術作品鑑賞教育やアートプロデュースを学び、2012年3月に退学。退学後は南米放浪や、ベンチャー起業での事業立ち上げ・運営に取り組む。その後2013年10月から津和野町役場町長付けに赴任。観光プログラム『ROLE PLAYING TSUWANO』とローカルバラエティ番組制作を担当する。

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