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両足義足でハイヒールを履くという選択 片山真理

2012年8月7日 10:01 PM あそぶ--おしゃれする


この文章は、Fragmentsの両足義足でハイヒールを履くという選択 / アーティスト・片山真理さんからの転載です。

若手アーティストの発掘・育成を目的に開催される展覧会・アートアワード東京丸の内。若手アーティストの登竜門としてすっかり知られた存在で、今年で6回目を迎えました。2012年のグランプリは片山真理さん(24)。両足とも脛骨欠損という、主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに切断。以来、両足が義足のアーティストです。


『ハイヒール』http://www.shell-kashime.com/ 、2012年(許諾を得て掲載)



展示された「ハイヒール」という名の作品群は、小物にあふれた小部屋に切断した『過去の足』を装着した女性と、ガーターストッキングにハイヒールを履いた足を装着した女性の2つのポートレートを中心に、その手前に義足や足をモチーフにした布製のオブジェが飾られていました。

「個人的な身体の事柄から発し」て、「幼少の頃からの思い出、日常の現在、そして未来への希望へといったさまざまなレヴェルのものを、言葉にできない諸々の形象を通して繋げていく」と評された真理さんの作品は、確かに自身の身体を起点に持つハイパーリアルの作品集ですが、彼女が実際に履いて登場した薄桃色と黒の「ハイヒール」は、その他の制作物とは切り離された「ハイヒールプロジェクト」として特別な主張を持ちます。


2011年、ハイヒールを履いてのライブ出演を目標に、「high-style」という、義足でハイヒールを履くための部品をアメリカから取り寄せたのがことの始まり。取り寄せた足部に合うハイヒールを作る中で真理さんが知ったのは、福祉と装いを取り巻く環境についてでした。

目標を達成するまでの間、現在の日本における義肢装具をとりまく環境――自立するという選択肢すら持てないという現状――を知りました。ハイヒールを履くかどうかだけではなく、サンダル、ローファーを履くこと、スカートを穿くこと(中略)。それらを選択出来るということを知らない、情報が無いという地域格差、情報格差。(http://www.shell-kashime.com/)

それを知って抱えた言葉にならぬ思いを『見せつけ』る、主張のハイヒールなのです。
『両足義足の場合、パイプの長さを変えれば簡単に身長を伸ばすことが出来ます。ですが、ハイヒールのほんの数センチの高さは、それとは違う目線であると思います』とも語る真理さんが、ハイヒールプロジェクトについて、ファッションについて語ってくださいました。


『in my room』http://www.shell-kashime.com/ 、2009年(許諾を得て掲載)



『昔からお洒落が好きなのもありましたけど、10代の頃はめちゃくちゃいじめられっ子だったのですよ。それで、意思表示のために義足に絵を描いたり義足をレインボーとかカラフルにしたりしていたのがきっかけで、ファッションに興味を持つようになりましたね。いじめっ子たちは、私の言葉を何一つ聞こうとしない。じゃあ、言葉が通じないなら見た目で表現するしかない、と。それでちょっとわけの分からない格好して、真緑に髪を染めたり眉毛を全部剃ったり……超ミニスカートにして義足に絵を描いたりしていました。それはもう、めちゃくちゃ怒られました(笑)。

『地元・群馬にいる頃は、ZipperやCutieの読者モデルの人たちが着ているものをインターネットで検索して、近くの小売店で取り扱っていれば母親と見に行っていました。それでも、義足のこともありますけど、その頃は太っていたので……体型が合わなくてなかなか買えませんでしたね。義足でぴったりしたものを履くと、膝を曲げてから再度立ち上がる時に、生地が膝の裏のところで詰まって上がってきちゃうんですね。昔はそういうのが嫌で嫌で仕方なかったんですよ。そういう時には、ユニクロなどで大きいサイズで似たようなものを買って、自分でサイズを直して、ペイントや絵を描いたりして着ていました。

『High Heel Project』http://www.shell-kashime.com/ 、2012年(許諾を得て掲載)



『10代の頃も今も、選ぶのはだいたい黒い靴です。本当にどうにも気に入った靴で、ヒールが合わない時は、義肢製作所へ持っていって義足に合わせてもらうこともあります。ベタ足の足部は、5ミリでもかかとが高いと履けないんですよ。義足って、踏み込んでつま先で蹴り上げるっていうことができないので、かかとが滑ると全部が滑っちゃう。「何の洋服にでも合う、歩きやすい靴」となると、コンフォートシューズしかないです。特に、東京靴流通センターのプライベートブランドのスリッポンが履きやすい。マットなブラックで、何の服でも合わせやすくて、3年ほどリピート買いしています。でも今年になって、それが廃盤になっちゃったので、次に何を履こうか考えているところです。

考えているのは、ニューバランスの紐靴。ニューバランスは元々補装具のメーカーだったのですごく歩きやすいんですが、紐靴はすごくめんどくさいんですよ。紐を全部ほどかないといけないんです。でも、ベルトタイプの靴だと洋服を選びますよね。ほんと、どうしよう!


『このハイヒールを作るにあたって、取り寄せた足部に合う靴がなかったので、まず木型を作ってもらいました。ヒールの部分は、安いパンプスを買ってきて木型に合うように切り取ってくっつけたんです。12cmのヒールをオーダーメイドで作ると異常に重くなっちゃうんですよ。なので、この靴自体は異常に軽いです。
甲をしっかり固定しないと、脱げない丈夫な物にはできないよって言われたので、昔履いていた補装具をイメージしてちょっとごつめのデザインにしたんです。でも、できればもっとシャープでシンプルな物にしたいんですけどね。

ハイヒールなんて、歩きやすさとはほど遠い存在だろうと思ったんですけど、履いたときに異常に歩きやすかったんですよ。初めて履いた時はびっくりしました。歩いた瞬間、次の一歩が出て、ふだん履いているベタ足の義足よりもすごく歩きやすい。そしてハイヒールの持つ力のせいか、やっぱりこれを履くとなんか前向けるっていうか、上向けるっていうか、元気になれるんですよね。ハイヒールの魅力なんでしょうね』。


『ファッションがどれだけ好きでもハイヒールは履けないし、レギンスやスキニーパンツみたいに足のラインが出てこそかっこいい服を着てもどこか垢抜けない。10代の頃のファッションに掛けるエネルギーは尋常じゃなかったです。シルエットとか、全てが自分の思い通りにならないと気が済まなかったんでしょうね。無意識に抑圧されていたものがあふれてあふれて仕方なかったのか。自己主張がとにかく激しかったんだと思います。

幸い、裁縫がすごい好き……というか、小さい頃からミシンの音を聞いて、当たり前に「縫う」ことがある環境で育ったので、「自分に合う服がないんだったら自分で作ればいい」というのはしごく当たり前のことでした。今は、Tシャツにジーンズでもぜんぜん気にならなくなりましたけどね』。


続き、「福祉と装いとハイヒールプロジェクト」はこちらから


・片山さんをフューチャーしたエシカルファンション誌の制作資金が現在、クラウドファンディングサイト「GREEN GIRL」で募集している。プロジェクトはこちら

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