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ネイティブ アメリカンの涙 石油管路建設巡り政府と対立

2016年12月8日 12:28 PM まなぶ--グローバル

ノースダコタ州にあるネイティブ アメリカンのスー族の保留地であるスタンディングロックで、石油パイプラインの建設を巡り、政府とスーインディアンたちが対立している。この建設には、世界38の銀行が投資しており、日本の銀行は、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行が投資している。建設しているパイプラインの距離は、ノースダコタ州からイリノイ州までの2000キロ弱に及ぶ。建設が強行されていることに対し、スーインディアンは、「飲料水の水源であるミズーリ川が汚染されてしまう」と訴える。現地から報告する。(文・写真=森本 洋子)

建設を反対するため、全米からインディアンがキャンプに集まっている

建設を反対するため、全米からネイティブ アメリカンがキャンプに集まっている

このパイプラインを建設しているのは、米国陸軍工兵隊、ダコタアクセス法人、EPA (米国環境保存局)など。パイプラインの距離は、北海道から九州までの長さに匹敵する1,168マイル。ノースダコタ州を越えて、サウスダコタ州、アイオワ州を渡り、イリノイ州までに及ぶ。この建設が完成すると約5万バレルの石油がイリノイ州まで送られることになる。

この建設には、世界38社の銀行が投資した。米国大手のウエルズファーゴ銀行、チェイス銀行、バンクオブアメリカ、シティーバンク、バンクオブスコットランド、HSBC銀行など。日本は、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行が投資している。

投資している銀行のリスト

投資している銀行のリスト

政府はこの建設を許可したが今年一月、地元のスーインディアンが 米国陸軍工兵隊へ、環境汚染、パイプラインの事故の懸念を理由に反対を訴えた。しかし、訴えは却下。それから、政府と地元のスーインディアンの対立が始まった。

スタンディングロック インディアン保留地はパイプライン設置建設予定の1キロ以内に立っている。もし事故が発生すると、スー族の飲料水の水源であるミズーリー川が汚染の為に使用できなくなり、環境破壊につながる。

法的にネイティブ アメリカンは政府からインディアン保留地に移された時に、保留地近辺での建設などはネイティブ アメリカンに必ず提案書を提出し、ネイティブ アメリカンの意見を聞かなければいけないことになっている。だが、米国陸軍工兵隊は、地元のスーインディアンには提案書も提出せず、そのまま建設を強行した。

建設予定地の中には先祖の眠っている神聖な場所が掘り起こされることになっており、スーインディアンは「またしても、政府はネイティブ アメリカンとの条約違反を犯している」と語る。

反対する人々は、「ウォータープロテクター(水を守る者)」と名乗る。このミズーリー川は、スーインディアンだけではなく、ノースダコタ州近辺の州の飲料水としても使用されている。今年、米国内での石油パイプラインの事故は25件。この数字が、パイプライン建設に反対する理由を物語る。

ウォータープロテクターとして、建設に反対する

ウォータープロテクターとして、建設に反対する

ウォータープロテクターらは4月以降、パイプライン建設場のすぐ近くの米国陸軍工兵隊の場を借り、キャンプを設立。Oceti Sakowin Camp (オセティー サコウイン キャンプ)と名付けた。そこに隣接している セイクレッドストーン(聖なる岩)にもキャンプを設立した。

これらのキャンプを拠点とし、全米各地から、ネイティブ アメリカンの部族が集まり、反対運動を行っている。歴史的に見ても、これだけたくさんのネイティブ アメリカンの部族が一カ所に集まるのはとても稀だ。

なかには、この反対運動のために持ち家を売り、この地へ永住する覚悟で引っ越してきた ネイティヴ アメリカンもいる。

ネイティブ アメリカンは、「米国政府は私たちへの約束を守らない。これまでになんども政府は、自分たちの先祖を殺害し、土地を略奪し、聖なる場所を潰してきた。私たちの子孫と地球のためにこの建設を止めなければいけない。水は命の元だ。しかし、暴力は暴力を呼ぶ。だから私たちは、暴力を使わないで工事を阻止しなければならない」と語る。

オバマ大統領は、パイプラインの建設を一時停止したが、9月9日に米国連邦判事は公有地でのパイプラインの建設の停止を解除、事態は変化してきた。武器を持たず、建設反対する人たちに向け、警察は警察犬を放ち、妊婦を含むプロテスターが犬に噛まれ怪我をした。

10月28日にオセティー サコウイン キャンプの北側にある橋の上でトラックが放火されたことも起きた。11月に入っても、ノースダコタ州に米国各地、そして世界各地からパイプラインに反対する人々が訪れ続けている。ノースダコタ州の冬はとても寒いのにだ。

警察は武器を持っていない人々に氷点下の気温の中で水をかけ、催涙ガス、コンカッション グルネーと呼ばれる手榴弾を投げ、ゴム弾を発射。150人が怪我をするにいたった。

コンカッション グルネーとは手榴弾のことで、爆発すると近くにいる人間は衝撃波を受ける。

21歳のソフィア ウイランスキーさんはコンカッション グルネーが腕にあたり大怪我をし、腕を切断する可能性があるという。警察は、ウイランスキーさんはプロペインタンクが爆発した為に怪我をしたと発表したが、現地にいた人々との証言とは異なる。

スタンディングロック

スタンディングロック

筆者は、11月23日にセイクレッドストーンに到着した。感謝祭の前日でもあり、多くの人たちがここに集まっていた。推定7千人から1万人が訪れて、野外で暮らしている。ここで過ごすには必ず、ネイティヴ アメリカンの指示に従わなければならない。

学校の建設や、キッチンの手伝い、ドネーションの整理、その他たくさんの仕事がこの場所ではある。皆協力し合いながら、ここで過ごしている。沢山の子どもたちも野外キャンプで暮らしているが、これからとても寒くなるのでプロテクターの健康維持が心配される。

この地で一番大きい街、ビスマックからは車で一時間かかるため、インターネット、電話の受信が悪い。それにもかかわらず、毎日キャンプ場の上空をセスナ(ヘリコプター)が飛んでいる。

リーガルチームに聞いたところ、セスナからは、ステイングレイという軍のプログラムを使って、キャンプにいる人たちの電話、インターネットの受信を遮り、バッテリーを排出することができるという。

セスナが低空飛行していると、ステイングレイはセスナの近辺のスマートフォンの情報を盗むことができるとも聞いた。実際、筆者はメディアチームにメディアパスを貰いに行っている時に、スマートフォンでEメールを開き身分証明をした。すると、突如スマフォのバッテリーが無くなくなった。空を見上げると上空をセスナが飛んでいた。

エルダーと言われる、各ネイティブ アメリカンのリーダーの指示を必ず守らなければならない。ディレクトアクションと呼ばれる反対デモ行為は必ずエルダーの指示で動いている。あくまでも、非暴力が基本である。

スーインディアンの議長である、デイビッド アーチャムバルド氏に現状を聞いた。

議長のデイビッド アーチャムバルド氏

議長のデイビッド アーチャムバルド氏

「今、7000人もの人たちと供にこのスタンディングロックでパイプラインの建設の反対をしている。私たちは、パイプライン建設の反対を議会に提出したが一時停止を認められた後、反対は却下された。 戦略としては、気候変動や地球温暖化をもっと広めなければいけないと思っている。私たちが今、この地球に対して何をしているかをしっかりと把握していかなければならない」

日本の大手銀行が投資していることについてはこう答えた。「地球を破壊する為の投資ではなく、地球の環境を守る為にどこに投資できるかを考えていただきたい。 私たちでしか地球は守れない。そして、祈ってほしい」

スタンディングロックは、取材した時期(11月29日)、大雪が降った。プロテクターの健康が心配されている。

24日には感謝祭で、「ウーマン サイレント プレーヤ マーチ」が行われた。女性が中心のマーチで5つのグループに分かれて封鎖されている橋に乗り込み、橋の上での先祖への祈りを捧げることが目的であった。

橋の上では、北側に警察がバリケートを張っており、武器を持った警察官がゴム弾、催涙ガスを手に立っている。

緊張の中、警察との話し合いの上、マーチは成功した。このマーチを指示していた女性エルダーは、マーチの途中、反対運動者ができることについてこう語った。

「(この建設に)投資している銀行の口座を持っている人々は銀行の口座を閉じる事、そして各自住んでいる地元の銀行に口座をつくり、街の活性化に役立てること」

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