まなぶ

クラウドファンディング「国内最高額3000万円」の舞台裏

2014年4月23日 5:40 PM IT×ソーシャル--まなぶ

ウェブサイト上で起業資金や活動資金を募る「クラウドファンディング」(CF)で、国内最高額と見られる3100万円の資金集めが4月21日、成立した。CFは新規業社が相次いで参入するなど盛り上がりを見せているが、超高額資金集めの背景にはからくりもありそうだ。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

国内最高額を集めた「BULK HOMME」のプロジェクト

国内最高額を集めたプロジェクトは、「Makuake(マクアケ)」がウェブサイトで紹介していた。プロジェクトの主体は男性用化粧品メーカー「BULK HOMME(バルクオム)」で、集まった資金は東京・青山に建設するエステサロンの内装や設備に使うという。

CFは一口500円からの小口のお金によって、ウェブを見た不特定多数が「購入」することで、起業家やアーチストなどのプロジェクトを支援する仕組みだ。起案者を支援した人が「ファン」となり、広報や企画の運営などの作業も手伝うなど、起業家にとって新たな資金集めのスタイルになっていた。

今回のバルクオムの手法は、それとは大きく異なる点がある。ウェブで掲載するだけではなく、知り合いの企業経営者らに法人営業をしたのだ。バルクオムの野口卓也代表は、成功した要因を「企業スポンサーを募ろうと、比較的高額な金額を設定し、経営者に営業した」と話している。CFに掲載されていることで、信頼感が増し、営業しやすかったという。

「今振り返ると、多くの企業に営業してきたことで、最終日までに残り1000万円までに到達していたことが大きかった。社内では、1日で1000万円集めることは難しいと諦めかけていたが、最終日の午前中に100万円の大口を購入していただいた方が出た。これが引き金となり、一気に支援者が増えていった」(野口代表)

最終日には、全支援者(243人)の約半数に及ぶ100人ほどが購入した。マクアケを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングの坊垣佳奈取締役兼広報も、「最終日には支援者らがSNSで拡散し、プロジェクトページへのPVがそのほかのプロジェクトの最終日と比べて10倍ほど上がった」と話す。

だが、この法人営業についてSNS上では、賛否両論の意見が出ている。

「話題性を高めたことで戦略勝ち」や「最終日だけで1000万円近く集めた影響力は見習いたい」というコメントもあれば、身内による大部分の購入の可能性も指摘されている。実際、243人から3100万円を集めたが、その内の2500万円は19人が購入していた。

「CFで『身内』が購入することは、なかば常識となっているようです。最近、映画のCFも、有名な女優とかキャリアのある監督が『仕込み』で応募するのが目立ちますね」(CFで資金集めをした経験がある映画監督)。

身内や自社による購入はCFにおいて違反ではないため、このプロジェクトには問題はないとされる。ただ、利用者からは「ルールが未整備なところがある」との指摘もある。

例えば、今後1億円規模の案件が出てきて、仮に8000万円を自社や知り合いが事前に用意して購入し、成功した場合、それはフェアなやり方と言えるのだろうか。

クラウドファンディングに詳しい、シン・ファンドレイジングパートナーズの河内山信一代表は、「身内(関係者)が購入するのはNGではない。達成額まであとわずかの時点で、関係者にプッシュするのは戦略上当たり前で、問題ない。ただ、起案者側がたくさん購入しすぎるのは良くないかと。難しいですが、モラルの問題ですね」と話している。

CFは米国で2008年ごろに登場し、日本に2011年に上陸した新しい仕組みであるため、法律がきちんと対応できていない。国内の主要CFが該当する、資金提供者が金銭以外のモノやサービスを受け取る「購入型CF」は、出資法の制限を受けていない。

バルクオムの今回のプロジェクトは、企業向け100万円のコースは、「エステティシャン総出で、御社の男性社員(40人まで)をキレイにするという特典をつけた」。その意味で、投資型ではなく、購入型と言える。

法務省刑事局刑事課の野口公次氏はオルタナS編集部の取材に対して「購入型CFに出資法で規制をかけるかについては、いつから話し合いを進めるのかを含めて未定」と答えた。

一方、資金提供者が利益の中から配分を受け取る「投資型CF」については、金融庁は利用促進を目的に規制を緩和する方針だ。3月14日、新規上場時や上場後の資金調達の制度準備などを定めた「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。

日本では、CFのプラットフォームを運営する企業がわずか3年で20社以上に増えた。今後も、市場としての伸びが期待されている。だからこそ、公正なルールの下で、だれもが安心して参加できる仕組みづくりが求められている。

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