まなぶ

多形構造社会に向けて、ポリモルフィック・ワーキングの時代

2017年2月10日 9:15 PM IT×ソーシャル--まなぶ

SNSの仕組みを生かして、「シェア」系サービスが続々と生まれている。自宅や自動車の遊休資産を社会でシェアするエアビーアンドビーやウーバーが北米のサンフランシスコから生まれ、ホテルやタクシーなどの専門業のあり方を変えている。

しかし、働くことについてはどうか。世界では、難民や移民の問題が、日本でも契約社員やパートタイマーやアルバイトなど、いわゆる非正規社員の問題が山積している。

今、収入の格差を是正する勤怠給与管理システムが注目を集めている。国内運営するのはキズナジャパン(東京・千代田)。海外運営するのはドレミング株式会社で同社は、日本で初めて世界のフィンテック100社に選出された。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

キズナジャパンの高崎社長

第一弾では、多元的な価値が交換され、エシカルなコミュニティを支える仕組みを手に入れることもできるようになる多形構造社会のつながりの考え方、ポリモルフィック・ネットワーキングについて紹介した。

第二弾では、デジタルにつながる社会が生まれるまでの流れを洞察しながら、人の居場所や空間価値に目を向け、問題の山積する都市の観点からポリモルフィック・プレイスについて言及した。

今回、第三弾は、「ポリモルフィック・ワーキングの時代」と題し、IoT*AIといわれ情報社会基盤がさら劇的に進化しようとしている中で、人が働くことからみた社会の時間価値や新しい働き方の未来についての議論を展開する。

筆者は、松永統行氏(国際社会経済研究所)とキズナジャパンの高崎 義一氏のもとを訪れた。

◆働くことを根本から変える仕組みとは

池田:今日はフィンテック(IT技術を使った新たな金融サービス)がテーマですか。

松永:少し違います。軸になるテーマは、働くことにおける時間価値についてです。前回のテーマは空間や形でしたが、今回は時間です。高崎さんが提供してきたタイムレコーダーの仕組み(勤怠給与管理システム)がフィンテック100に選ばれ、世界が注目しています。

仕組を支える思想そのものが世界に認められたのではないかと思うのですが、なぜ、今、インターネットでつながり、ネットワーキングされたタイムレコーダーの仕組みが、世界を変えるとまで言われているのか、その本質について議論できればと考えています。目から鱗、だと思います。高崎さん、タイムレコーダーで何をしたかったのですか。

高崎:まじめに働く人に公平な評価をしてきちんとお金を支払う仕組みを作りたかったのです。

松永:阪神淡路大震災がきっかけと伺いました。

高崎:この震災で、経営していたフランチャイズ店が被災し、復旧のための借入金と同時に売上減に苦しみました。その時、再建に協力してくれたのが社員やアルバイト達でした。

私は、震災までずっと飲食業に携わってきました。だからアルバイトで働く人の気持ちがよくわかります。

また、人生の中で何回も窮地に陥りサラ金生活を余儀なくされたこともあります。ポケットの中に400円しか入っていないとき、スーパーで600円の弁当に半額のシールが貼られているのを見つけレジに並ぶこともしばしばありました。

レジに並んでいる時、定価ですよと言われたらどうしようとドキドキしながら並んでいました本当に惨めで悲しかった。

そんな生活からなんとか抜け出し事業も順調になってきた2008年頃、リーマンショックが引き金でネットカフェ難民問題が発生しました。

給与日までお金が足りないというネットカフェ難民に対し給与の前払い代行業者が現れました。時給800円で8時間働いて6400円です。そんな人から1回の代行手数料600円を取る悪徳業者でした。私は、それが許せなくて自分の働いた分の給与をいつでもコンビニのATMから引き出せるようにしたのです。

松永:企業からみて、働いた分のお金をその日に支払うというのは、どこが難しいのですか。

高崎:例えば時給1000円の人が8時間10分働いた場合1000×8h=8000+(1000×125%×0.166**h)
となります。3日間同じ勤務だったら1000×24=24000+(1000×125%×0.5h)できっちり割り切れるのです。つまり月単位で再計算してその差額を調整する必要があり、また税率も甲、乙、柄と働く人によって違います。さらに日額と月額でも率が違うため例外処理だらけの計算で企業が手計算するのは困難なのです。

池田:御社が提供するサービスは、勤怠から給与振込までワンストップで行えるのですね。

高崎:価格は350円(月額/1人)で業界でも最安ではないかと思います。初めは、600円で提供していました。多くの人に使ってもらいたいので利用者が増えれば、利用料も下げさせてもらっています。決められた利益率以上は取らないという方針でクラウドを使うと分岐点を越えると利益率が急増するから値下げできるのです。

松永:スカイプと似たようなコスト構造ですね。インターネット上のアプリケーションがオープン化という流れの中で社会的なインフラとなり、パブリックなICTサービスを作り出すようになりました。

従来の垂直的に統合した勤怠管理や給与管理の仕組みを、オープン化されたインターネットやインターネットクラウドを利用することで、水平協調型の仕組みとして提供したのですね。

高崎:給与の支払いを日払いや週払い、いつでも払いなど自由に設定できます。このような仕組みを企業側が取り入れれば生活費に困っている従業員に優しい会社になれます。真面目に働けば税金などを引いた手取り額がいつでももらえるようになります。

松永:デジタルの仕組みは、誰でも複製できるはずで、なぜ、大きなICT企業が同じような仕組みを提供できないのでしょうか。

高崎:大手システム会社は、オンプレミスで個々の企業毎に受託開発した方が儲かります。またパッケージシステム会社は、人事システム、勤怠システム、給与システムと業務毎に作る方が簡単なのです。

この収益構造や販売方法を変えることが難しいのではないかと思います。私たちが提供しているシステムは、この統合された3つの管理業務を、月、一人当たり350円で実現し、自在に給料を支払うことができます。一万人の会社でも、月、350万円で日払いが可能になり、また、日次の人件費の把握や過剰労働者のアラート機能はもちろんのこと、年末調整までWebで管理、閲覧できます。費用対効果絶大です。

松永:20世紀は、社会と経済の視点で成長が求められた時代で、とりわけ、大企業はモノの生産を主軸に経済成長のための効率化に邁進しました。企業の所有する情報システムも、企業の全体最適化や効率化のためのヒエラルキーや分業体制に合わせて構築されてきました。その結果、企業活動はグローバルに加速度的に規模を拡大しました。

一方で、公害問題等、自然環境を破壊する現象も広がり、人についても過剰労働の問題等、労働環境の問題が、21世紀に解決しなければならない大きな課題として残されています。労働環境の問題は、長い間、主に企業側の考え方や仕組みの問題として捉えられてきたのではないかと思います。

高崎さんのように、考え方を逆転させる必要があるのではないかと思います。高崎さんは、徹底して働く人の側からシステムを構築したわけですね。システムの構築の思想が今までと逆です。

情報通信網は経済や社会の神経網にあたりますので、構造を捉えると驚くほど類似します。電話局やテレビ局のように、中心のある仕組み、中央から外に広がるハブアンドスポークと呼ばれるような形態をもつ機構に、今までの経済や社会の成長は支えられてきました。

戦後の日本は、東京を中心とした情報網の構築から始まりました。焼け野原に、電話局ができ電話サービスが広がり、テレビ局ができ東京タワーが建てられテレビ放送が始まりました。

俯瞰すれば情報網が先です。その後に、鉄道、高速道路、国際港や空港等の社会インフラが建築され、その上に経済や社会が復興していきました。前回の都市の議論にみるように、空間的要素、つまり、都市の形ができてから、そこに集められた働く人の時間が生まれています。

東京への一極集中はこの時期から始まり、本質的に画一的な構造の上で拡大し、モノの豊かな社会を実現した一方で、働く人にとってはストレスの高い社会という状態も生んでいます。

経済成長を使命とした社会が環境という要因を考えざるを得なくなった20世紀の末に、経済や社会の神経網にあたる情報通信に、インターネットが登場し、機器や人々が車座につながる仕組みを提供しました。

さらに、クラウドコンピューティングが登場し、コンピュータや通信の資源を自在に提供するインフラとして進化し、この上に、SNSとよばれ、人々が創発し合うようなダイナミックな場が生まれてきました。

この進化は止まりません。この次の進化を表す科学技術側の言葉にIoT*AIがあるのですが、IoTというのは、今までつながっていなかったデバイスがさらにインターネットにつながることを、AI(人工知能)は、さらに高度に人のように振舞うコンピュータが社会の中に入ってくることを表す言葉ですが、実際にこのような領域の研究開発は劇的な進化を続けています。

高崎さんが作り出した仕組みは、従来の経理や勤労や人事というシステムが、企業側すなわちハブ側の発想から作られた仕組みであるのに対し、全く逆転して、働く人の側、言い換えればスポークの先の思想から仕組みを作られたのではないかと思います。

働く人の時間価値を主軸にしている点が特徴的です。インターネットクラウドの仕組みが、今までとは逆の方法論や思想でも受け入れ、全く新しい、組織や企業や都市のかたちや、同じく人の行動のつながりや創発を、同時に作り出す可能性に満ちていることを実証しているのではないかと思います。

◆時間通貨ともいえる「働くこと」の直接価値化を実現

松永:フィンテックで脚光を浴びておられますが、金融の仕組みとは少し違いますよね。

高崎:そうです。私たちが提供している仕組みは、タイムレコーダーから展開したシステムでDaim(大夢)といいます。日本では、企業側の都合、つまり面倒な給与計算に時間とコストをかけたくないという理由とキャッシュフローをよく見せるために後払いにしているのだと思います。

大企業は、後払いにしてその給与を運用している会社もあるそうです。しかし、時代は劇的に変化しています。企業がいつでも払いを実現しようと思うと計算が大変で時間とコストがかかります。私たちは、働く人に優しい会社のために退勤した瞬間に手取額を算出できるシステムを開発し安価に提供する事にしたのです。

ロンドンに、Level39という共有型のワーキングスペースがあります。英国政府の支援の下に組織された金融の業界団体が支えるフィンテックのシリコンバレーのような場所で、新しい金融のビジネスモデル創出を目的に、次世代に向け切磋琢磨している企業が集積しています。今、ここに入居しています。

2016年のFintech100の受賞に対して、Level39の企業からも賞讃をいただきました。ロンドンのLevel39は、世界最大級のフィンテックのアクセラレーターで180以上の革新的なビジネスモデルを持つ企業が世界から集まっています。しかし、これだけ多くの企業が金融のビジネスモデルを提案しているのですが、ほとんどがホワイトカラーの視点でつくられています。

よくみると、このビジネスモデルは2種類に大分されます。一つは、富裕層の資産を管理、運用するモデルです。もう一つは、多くの底辺の労働力に支えられている経営活動を管理する仕組みです。しかし、富裕層の資産管理や低所得者から手数料や金利を取る仕組みでは、社会を本質的に良くすることはできないのです。

労働力が非正規的な雇用に支えられている国では、政府も労働者にどのようなお金が支払われているのかが、よくわからないので、実際には、税金がきちんと取れているのかさえわかりません。

このような構造が社会に悪循環を生みます。このような問題を本質的に解決できないのです。私たちの仕組みを使えば、ブルーワーカーの方々にきちんとお金が払われると同時に、国や政府にとっても、きちんと税金が徴収できるのです。

英国政府からは、シリア難民対応の仕組みとして導入検討したいというお話しもいただいています。英国政府は、受け入れた難民に対し生活保障のお金を支払っています。

ゆりかごから墓場までといわれている英国の生活保障のお金を目当てに、多くの人たちが国境に押し寄せてきているのが実情で、切りがありません。生活保障でお金を渡すのではなく、労働に対してお金を支払うことができるのです。

私たちの仕組みは、きちんと働くブルーワーカー、労働者のためにあるのです。その点で画期的であるといわれました。そもそも、この仕組みは、神戸の阪神淡路大震災の被災の中で皆、働かなければならないという苦境の経験の共有から生まれた仕組みですから、20年来このポリシーは全く変わっていません

松永:きちんと働いた時間に対し、きちんとお金が支払われる仕組みに、現在の政策を根底から変える力があるのですね。

◆時間価値が組織内の関係性も変える

松永:インターネットが情報を車座につなげる仕組みを提供しましたが、つながると内向きにいろいろな関係性が現れ、あたかも生き物のように自律的に柔軟に振る舞う仕組みが登場します。これがインターネット、インターネットクラウドの次の進化だと考えています。

新しい環境に適応するために、内部の関係性が再編される状態を、インターコネクティッドとよぶことがあるのですが、高崎さんの作られた仕組みは、組織の内部的な構造も変えるのでしょうか。

高崎:スーパーマーケットにこのタイムレコーダーを入れたときの話です。このような職場では、お局様のような存在が必ず生まれていて、嫌われる仕事が新人に回され、新人が辞めてしまうという状況がありました。

インターネット時代のタイムレコーダーですので、仕事の内容に対して、細かく時給を設定し、さらには分単位で働いた時間を登録することができます。労働の種類や価値にきめ細かく合わせた分給を支払うことも可能な仕組みを提供しました。

松永:時間に労働価値の色をつけたのですね。

高崎:このような仕組みを導入したところ、嫌われる仕事を新人に回していたお局様が、率先して、時給の高い仕事をするようになりました。

松永:時給いくらで支払われていたお金が、何に対していくらというきめの細かい、正当な支払われ方をすることにより、仕事のあり方を変える可能性があるのですね。労働の時間に色を付けることで、内側の意識的な壁を取り除くとともに、職場の関係性も変えてしまっています。

高崎:搬入の作業も大変で、そういう作業に対しても、きちんと仕事をした人にきちんと対価を支払うことができます。

松永:スーパーマーケットのような仕事ばかりではなく、次世代コンピュータの情報空間を扱うような先端的で高度でクリエイティブな仕事にも広がる可能性がありそうです。

給料が低い人だけではなく高い人の仕事や、ノマドと言わるような仕事についても、多くの働き方の自由度を格段に広げるのではないかと思います。きちんと仕事をすることが認知され、それが履歴として残り、共有することも可能になるわけですから。

また、趣味や自分の関心の高い、お金の価値では計れない仕事との出会いや接点も生まれるのではないかと思います。

高崎:先日、新聞社の方とも話をしていたのですが、今後は、必ずしも会社に所属しなくてもよいという世界がインターネットならできるはずです。先週から弊社でも試しているのですが、社内でチームをつくり会社に見立て、自分で目標を考え、予算を決め。どうしたいのか、将来どうなりたいのかは自分で決めて働ける環境を作ることに挑戦しています。

会社の駒で人生を過ごすことはつまらないことなので、会社の中でも自分たちが起業できるような仕組みを作ったのです。さらに会社に所属しなくてもきちんと収入が確保でき働ける仕組みができればと思います。自分の給料計算が自分で計算できる仕組みがあるので、日給、週給、月給制、時給制、月2回制でも、自分で設定して自由に働くことができるようにしました。

松永:自分の時間価値を自分で提示し、プロジェクトに統合するのですね。このような仕組みがあれば、自分で判断しながら、いろいろな人と自在にコラボレーションしながら働くこともできます。このようなバリエーションが取れるのは、とても魅力的な未来像だと思います。

高崎社長と対談する松永氏

高崎:国境を超えるとさらに面白いことができるのではないかと思います。例えば、日本の仕事の技術を学びたい人たちは沢山いて、来てもらって勉強して帰ってもらって現地で事業を立ち上げてもらうこともできます。今までは接点がなくできなかったことが、インターネットならできます。

松永:情報空間から接点が生まれて、実空間にインタラクションが起こる。固定電話やファクシミリのように実空間の固定的な2点をつなぐ情報通信が行われていたインターネット以前の時代とは逆転しました。

情報空間上で相手の存在価値と自分との関係性を認知し、時間や意味や文脈の価値の交換が行われます。構造が従来のように固定的に拘束されず、認知された関係性の下に価値交換されるので、業態や所有や労働時間や活動場所といった従来の枠づけやボーダーが見えなくなるのではないかと思います。

ボーダーはなくなったわけではなく、有機的に、アドホックに生まれたり消えたりするのだと思います。従って、インタラクションのデザイン力の時代だと思います。

◆復興支援から地域創成へ ~文脈の上に生まれる創発的価値が社会の仕組みをつくる~

池田:1992年のセヴァン=スズキさんのスピーチで有名になったリオの地球サミットで環境が世界中の問題意識になりました。日本の企業にもCSR活動が生まれ、波及して学生の環境活動も生まれました。

2011年に東日本大震災が起こり、このような環境活動が復興支援活動に変わり、これが一昨年あたりから地域創成に流れてきています。復興支援から地域創成への流れは自然の流れで、緊急支援が終わり復興支援のフェーズに変わる中で、東北で起きている人口減少と高齢化の問題は、日本中で起きていることで、どのように対処すべきか、という問題意識が共有化され全国に広がっています。

松永:文脈の上に、創発的な活動が起こると言われています。1992年の地球サミットで、企業や学生に芽生えた地球環境意識が、2011年の震災で東北という局所の出来事に対する具体的な支援活動や復興活動に変わり、さらに、自分の周りにも存在するさらに身近な高齢化問題への意識に変わっていく。

集まった人の意識が内側につながるインターコネクティッドな意識というのがあって、集合知としての関係性が認知されていく現象ともいえるのではないかと思います。高崎さんの仕組みの誕生もそうですが、震災という苦境の共有が源泉です。

局所における出来事への問題意識と対応の共有経験が、身近な高齢化という問題の中にも広がりました。創発は、局所で起こります。モノにおいてもコトにおいても時間においても、創発は、人の生きがいそのものではないかと思います。

高崎:故郷の田舎に80歳を超えている伯母がいるのですが、ゆず胡椒づくりが得意で、親類から親類の友人まで彼女の作るゆず胡椒が楽しみです。そんなに沢山はつくれないといいながら、彼女にとっては生きがいになっています。

徳島県上勝町の高齢者の葉っぱビジネスのような高齢者の生きがいにつながるビジネスモデルを若い人が作ってくれればと思います。こういう接点もインターネットを使えばできるのではないかと思います

◆知性的な社会の仕組みの構築~多形的な働き方を実現する情報プラットフォーム構築の時代を迎えて~

松永:高崎さんのような思想の仕組みを使えば、村で一つのビジネスモデルではなく、もっといろいろな組み合わせが可能な働き方、ポリモルフィック(多形的)な働き方ができ、働く意欲も出てくるのではないかと思います。

現在の驚異的なコンピュータサイエンスの進化の中をみると、科学技術側の進化については次のような文脈があるのではないかと考えています。

ビックデータやアナリティクスという言葉が広がりましたが、これらの技術領域に対応するコンピタンスが、アルゴリズムを作り出す力です。

インターネットの仕組みも、グーグルの検索の仕組みも皆、この領域の研究から生まれ、ウーバーやエアビーアンドビーのサービスモデルもアルゴリズムが社会インフラ化した事例です。この領域は圧倒的に米国が強いと言われています。シリコンバレーのような果敢に挑戦を続ける開発拠点の風土もあるのではないかと思います。

IaaS、PaaS、SaaS等、このような技術基盤をサービス化することで米国はインターネットの世界を構築してきました。近い将来においても、人工知能、仮想現実、拡張現実、ロボット、ブロックチェーン、IoT、シンギュラリティ等の先端技術を社会革新につなげる力と風土は米国のコンピタンスではないかと思います。

アルゴリズムという点では、社会的な合意や保証についての変革がすでに始まっています。ブロックチェーンは、ビットコイン(仮想通貨)の仕組みのアルゴリズムの総称でもあるのですが、インターネットに車座につながった参加者が帳簿の信頼性を保証する仕組みで、従来の銀行のような中心的な機構を持たなくても送金ができるようになりました。

中心的な仕組みがなくてもいろいろな価値の交換が実現できるのです。このような特徴からコンセンサス・アルゴリズムを革新する破壊的技術と言われています。

革新的技術の到来が現実化していく中で、人を中心とした情報技術のあり方が近い将来の課題として取り上げられ、倫理問題から法律問題まで多元的な議論が始まっています。

このような文脈の中で、中国は、プロダクトからサービスを生み出す潜在力を有しています。例えば、スマートフォンのような高機能な情報端末は、提供しているのは米国の企業でも、製品については中国やインドで作られています。中国では、グローバルな生産供給だけではなく、数億台のモバイル端末が国内でも利用されており、このような先進的な情報機器からデータを集めれば、次世代サービスを創出する環境をつくることができます。

日本はどうするのか。ビックデータやデータアナリストと一時期は騒がれましたが、本質的に、このような技術革新による産業創出の文脈の中では、有効なポジションが取れないのではないかと考えていました。

高崎さんは、人が働くという根源的な時間価値のサービスから、アルゴリズムに向かう形で、仕組みやモデルを作り出し、世界から注目されているのではないか思います。

破壊的技術革新の文脈を折り折り畳んでしまった。このような循環的な文脈の上であれば、全く新しい、むしろシンプルなアルゴリズムによる知性的な仕組みや、また、想像力溢れる製品やサービスが、若い人たちから次々に生まれてくるのではないかと思います。

小さなきっかけでも循環することにより、創発が重層化するはずです。時代はシェアリングに向かっているので、中央機構がなくても価値交換はできるようになり、コミュニティの時事に適応した循環が生まれます。

高崎:途上国に行くとよくわかります。自動車が交差点に止まると、子どもが洗車に来たり、花を売りに来たりします。皆、ご飯を食べなければならないので必死です。いつの間にか日本は豊かになって、のんびりになってしまいましたが、これが原点だと感じます。食べていくために働くことからはじめて稼げるようになるのが基本だと思います。

松永:高崎さんのタイムレコーダーは、基礎代謝を司る自律神経のような仕組みでもあるのですね。まず、人は食べて生きるために働くことからはじめる。きちんと働けばきちんとお金がもらえて食べていける。

それができたら、時給いくらで計る価値ばかりではなく、伯母さんのゆず胡椒の楽しみのような文脈の上に生まれる価値や、新たな発見や驚きのような創発的価値のために稼げばよい。多才で多様な価値が交換される。これは世界中どこでも同じですね。

高崎:世界の人口70億人、成人人口30億人の内、20億人が銀行口座を持っていません。平均年収20万円といった収入レベルの人たちにこそ、きちんと働けばきちんと食べていけることが必要です。

衣食が足りれば、移民や難民になる人たちも減らせます。フランチャイズ化して運営側からノウハウ料のみをわずかにいただく形態であれば、私たちの仕組みは、このような人たちには無料で配布することもできます。

まず、食べていける仕組みを広げれば地域は平和になり移民、難民希望者は減るのではないかと思います。その結果、現地でいろいろなサービスや商売が生まれ経済活動が活発になります。年収20万円の人たちが20億人そのほとんどの人が銀行口座は持っていないが携帯電話は持っています。

途上国では、偽札や賄賂、脱税、犯罪の温床になる紙幣を減らし携帯電話を使ったモバイル決済に急速に舵を切り始めています。つまり400兆円の決済市場がモバイル決済になる可能性があるわけです。途上国が先進国より大胆かつ早く変わると思うのです。そこに日本の若い人たちが新しいビジネスモデルを考え起業し挑戦してもらいたいですね。

池田:今回の対談では、ネットワーキングが生まれた時代だからこそ生まれたサービスの可能性を感じることができました。

今後ますますシェアやIoTが進むと思いますが、ステークホルダーである利用者の監視によって、健全な成長を果たしていくことを期待しています。本日はどうもありがとうございました。

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