まなぶ

地方創生に取り組む大学の課題 (野村尚克)

2016年2月16日 12:10 PM まなぶ--フューチャー

昨今、「地方創生」が注目され、大学も積極的に取り組んでいます。しかし、地方の課題は地域によって違い、「地方創生」をどのように行うかも大学によって異なります。この企画「地域創生+大学」では昨年から、様々な大学へインタビューしてきました。対象者は学長、教員、学生、協働する企業や行政、NPOなどです。しかし、実際に成果を出しているところはあまりないのが実状でした。では、いったいなぜ、大学は成果を出せていないのでしょうか。そのような大学にはいくつかの共通点があります。(野村 尚克)

全国の大学で地方創生に特化した学部ができ始めている

全国の大学で地方創生に特化した学部ができ始めている

①活動を始めてから日が浅い
まず、最も多いものに活動を始めてから日が浅いということがあります。地域創生が注目されたのはここ数年のことで、大学の取り組みもまだあまり時間が経っていません。よって、ノウハウの確立や展開にまでは至っておらず、インパクトは出せていません。また、取組んでいる課題が短時間で成果を出すことが難しいというのもあります。いまはまだ課題を抽出し、それに対する解決策を検討している段階です。

②目的がしっかりと設定されていない
目的がしっかりと設定されていないことなどあるのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実はこうした大学は多いです。もう少し正確に述べると、目的は一応設定されてはいますが漠然としていて曖昧です。よって、求める成果についても曖昧になっています。これでは何を目的として何を成果とするのかが分かり難く、具体的なアクションプランにまで落ちていません。

③責任者が明確ではない
目的と成果が曖昧であれば責任者も曖昧です。地域創生はどの組織で取組んでいますか?誰が担当者ですか?と尋ねると、「全学で取り組んでいます」「専門員がいます」といった回答があります。そこで続いてそれらの人たちに会うとそうした意識が低い。これは単にその人たちが無責任ということではなく、「責任が個別に設定されていない」「権限がない」ことが大きいようです。責任と権限はセットにすべきものですが、権限がないのに責任だけが与えられている現場がいくつもあります。また、担当者が主体的に動き、その計画を会議で説明すると横から担当外の人に否定されるというのもあります。否定的な意見も建設的なものであれば価値がありますが、単なる否定だけを言いたがる人もいるようです。地域創生に必要なのは前へ進むアクションで、否定するならば代案も必要です。こうした責任をもたない人からの横やりに悩む担当者は何人もいました。

④組織や人がバラバラ
責任は人につく場合もあれば組織につく場合もあります。しかし、どちらにもつかずにバラバラに動いている大学があります。ある活動について大学全体で動いているように見えても、一部の学部だけで動いていたり。専門の部署が動いているように見えても、教員が個人でゼミとして動いていたりなど、外見と中身の実態が違う大学です。このようなバラバラさは研究の自由からきているのかもしれませんが、見方を変えればガバナンスが機能していない無責任な大学とも言えます。団体での行動と個人での行動の違いを見直し、整理することが求められます。

⑤ニーズとスキルがミスマッチしている
大学には様々な研究者がいて知が集まっています。よって、そうしたスキルを組み合わせれば地域創生に貢献できます。しかし、スキルとニーズがマッチしていない取組みがいくつもあります。なかでもよく見られるものに研究者の専門と求められる分野がズレていること、そして研究者が現場で活動をプロデュースしていることがあります。前者は求められるニーズと研究分野が合わないのであればやらなければ良いと思うでしょうが、少しでも地域に貢献しよう、成果を出したいという想いから行われています。また、後者はスペシャリストである研究者がゼネラリストの役割を担い、さらに現場で全体を統括することで問題が発生しています。これもまた地域に貢献しようという想いからの行動ですが、明らかに現場が混乱しているものがあります。こうしたことが続くと協働先から信頼を失いますので、マッチングは慎重に行った方が良いです。

⑥実はやる気がない
最後に挙げるのは実はやる気がないということです。これはいままで挙げた点も関係しますが、一番大きなことにこうした取組みが評価されないというのがあります。その一つに、大学はこれまでも様々な地域活動を行っていますが、そうしたことへの評価がセミナーを何回行ったか、行政委員として参加したかといった関わりで行われており、最終成果に対する評価にはまで至ってこなかったことがあります。あくまで部外者としての関わりであり、当事者ではないので成果に対する貢献を示すことが難しいというものです。もう一つに、教員への評価は主に研究成果で行われるというのがあります。具体的には論文執筆や学会発表といったことです。よって、このような地域活動は教員からすれば学外活動や社会貢献活動といった「その他の活動」に含まれ、優先度が低いものになります。その他の活動をするならば、その時間で論文を書く。その結果、所属する学術コミュニティで評価され、より良い大学へと移って行くというインセンティブが働いています。こうした評価が行われていてはやる気が出ないのは当たり前です。

以上、インタビューを通じて見えた大学の課題をいくつか挙げました。これらのインタビューは地域創生に大学がどのように貢献しているかといった視点から行ったものです。しかし、その結果は地域創生の前に大学創生が必要なのではないかと感じるものばかりでした。地域創生は喫緊に取組まなければなりませんが、関わるにはプレイヤー自身の強みと弱みを客観視することが必要です。今回挙げたポイントはいずれも大学特有の課題で、こうした点を解決しなければ成果は挙げられないでしょう。地域創生が先か?大学創生が先か?おそらくこれらは同時に進め、共に切磋琢磨しながら行われるのだと思います。

地域創生にはやってみなければわからないことがたくさんあります。もちろん活動の前にはしっかりと調査を行って計画を練ることが必要です。しかし、従来のやり方で成果の出なかった課題では、効果を約束することは難しいがやってみる価値のあるものもあります。各大学とお話しすると、そうした見極めがされてないように思います。この活動は短期的に成果が出るか、成果が出るかは約束できないが挑戦する価値がある、といった見極めを行うことも必要だと思います。

そのようななか、キラリと光る大学もあります。教員や職員が熱心に取組み、成果はまだ小さいものの、今後を大いに期待させるものです。そうした大学については、今後の「地域創生+大学」で紹介したいと思います。

◆「地域創生+大学 by. alterna×S」の特設ページはこちら↓
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