まなぶ

資金調達の本質は「フレンド・レイジング」

2016年7月19日 12:07 PM まなぶ--フューチャー

NPOなどの非営利組織にとって、個人や法人から活動費を集める「ファンドレイジング」は重要な要素の一つだ。一般的には「資金調達」と訳されることが多いが、PubliCo(パブリコ、東京・品川)の山元(やまもと)圭太・代表取締役COOは「(資金調達の)本質はフレンド・レイジング(仲間づくり)」と断言する。5W1H理論で、仲間を増やしていく山元流メソッドを聞いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

公益組織への支援を行う山元氏。NPO業界では「ヤマゲン」の愛称で知られる

公益組織への運営支援を行う山元氏。NPO業界では「ヤマゲン」の愛称で知られる

山元氏はファンドレイジングを始める前に、「5W1H」をまとめることが必要だと言う。まず、初めに行うのが、「目的の確認(Why)」だ。このステップは5W1H理論の根幹であり、非常に重要だ。

主に3つの項目を確認する。その3つとは、「(団体内で)ミッション/ビジョンは明確か」「問題解決の仮説シナリオは組めているか」「成果を追及する覚悟はあるか」だ。

それぞれを意訳すると、「社会とどんな約束を交わしているのか」「その約束をどんな方法で果たすのか」「何があっても約束を守るか」である。この3つのうち、どれか一つでも不十分な場合は、「絶対にファンドレイジングはしないでほしい」と強調する。

『寄付白書2015』(日本ファンドレイジング協会編)によると、日本の個人寄付(2014年)は7409億円で、法人寄付(2013年)は6986億円。寄付額は限られており、「社会を良くする力がないのに、情報発信とファンドレイジングだけ上手い団体は 社会的害悪にもなる」と言い切る。

団体内でミッションが共有できているか調べる方法として、スタッフに白紙の紙を配り、1分間以内でミッションを書いてもらうなどがある。

ビジョン/ミッションの共有は団体内のモチベーションにもつながる

ビジョン/ミッションの共有は団体内のモチベーションにもつながる *資料提供:山元氏

山元氏は「ゴールを定めていない登山は、途中で活動疲れや空中分解を起こす可能性が高い」と言う。「最初のうちは、みんなでワイワイ登ることに楽しさを感じるかもしれないが、5合目辺りから、ゴールはどこ?このルートで良いのか?トレーニングは十分にしてきたか?装備はこれで良いか?など相次いで不安要素が出てくる。そうして、疲弊感を感じ、不信感や不安感を大きくし、活動停止につながる」。

Whyを定めた次は、Whatだ。NPOの5大財源として、「会費」「寄付」「事業収入」「助成金」「受託」がある。どの財源が最も良いのかと考えることは、「不毛な問い」と山元氏。その理由は、「どの財源にも、メリット・デメリットがある。特定の財源に絞るのではなく、複数の財源のバランスが大切」だからだ。

山元氏は立ち上げたばかりのNPOにおすすめなのが、「まずは比較的得やすい助成金で活動を続け、成果や共感を生み出し、寄付/会費や事業収入につなげること」とする。

ただ、ここで気を付けるのが、ファンドレイジングの捉え方だ。「目的を、お金集めととらえてはいけない」とし、「本当に探しているのは、お金ではなく、ミッションを達成するための仲間」と言う。「フレンド・レイジング(仲間集め)こそ、ファンドレイジングの本質」と考える。

Whatの次は、When(中長期計画)の設計だ。このステップでは、営利組織との違いが最も表れる。

営利組織が中長期計画を考えるさい、多くの場合、「利益」「売上」「(事業にかかる)費用」の順番に考える。一方、非営利組織は、継続的に活動を続けることがゴールではないため、「社会的成果」「支出」「収入」の順に考える。特徴は、社会的成果をどう測定し、どれだけ出せるのかだ。

Whenが終わると、Who(ペルソナ)を設定する。ペルソナを作るときのポイントは、「地に足をつけた妄想ができること」。会員データをまとめ、性別ごとに最も層が多い世代をペルソナとして設定する。その層の会員を数人インタビューし、職業や趣味、情報収集方法などを調べる。

ペルソナへの質問内容の例

ペルソナへの質問内容の例 *資料提供:山元氏

ここで大切なのが、そのペルソナに「名前と写真をつけること」。名前と写真がないと、無機質なテキスト情報だけになってしまい、覚えづらいためだ。山元氏が行うときには、その年代の最も人気な名前をつけ、写真はその名前で検索したときに出てくる画像を参考にする。

5Wの最後のステップはWhere(マーケットの整理)だ。団体にかかわるステークホルダーごとに人数や特徴を調べていく。それぞれがどのようにすれば、かかわってくれるのかの「スイッチ」を記入しておくと便利だという。

そして、最後のステップがHowだ。方法はクラウドファンディングやコーズリレーテッドマーケティングなどさまざまある。各ペルソナに最も合うHowを考えていく。

山元氏は成功の秘けつとして、「コツコツ続けていくこと。そして、仲間を大切にすること」と話した。

山元圭太:
株式会社PubliCo代表取締役COO
NPO法人日本ファンドレイジング協会理事 / 認定ファンドレイザー / NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)理事 / 島根県雲南市地方創生総合戦略推進アドバイザー
1982年滋賀県生まれ。同志社大学商学部卒。卒業後、経営コンサルティングファームに5年間勤務の後、2009年4月にかものはしプロジェクトに入社し、日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)を統括。 2011年より、非営利組織に対する運営支援を行っている。

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