はたらく

「論文は起業の原点」、受賞者が語る小論文コンテストの意義

2012年6月30日 9:30 AM はたらく--挑戦者たち

野村総合研究所(NRI)は、社会貢献活動の柱として「人づくり」を掲げ、若い世代の育成に取り組む。その一環として、若者に日本や世界の未来に目を向ける機会を提供しようと、2006年から毎年「NRI学生小論文コンテスト」を開催している。今年の共通テーマは「自分たちの子ども世代に創り伝えたい社会」で、現在小論文を募集中だ。論文の構想を基に会社や学生団体を立ち上げた過去の受賞者・木下優子さん、杉野浩史さんに小論文の意義について聞いた。

2007年特別審査員賞を受賞した木下優子さん(左)と2011年優秀賞を受賞した杉野浩史さん



2007年に小論文「創発による共進化の世紀へ」を執筆し、大学生の部で特別審査委員賞を受賞した木下優子さん(当時、慶應義塾大学総合政策学部4年)は、大学院進学と同時に、株式会社アゲハを立ち上げた。

同社は「ソーシャル・ガールズ・マーケティング」を事業コンセプトに、フェイスブックなどソーシャルメディアを活用したマーケティング支援を行っている。小論文で書いた商品企画開発プラットフォームの構想が基になっている。

■ ユーザーの声生かし、スマホ用リボンシールを開発

木下さんは、論文執筆のきっかけについて、「所属していたゼミで、個人の協働によるデザイン・プラットフォーム構築について研究していた。小論文を書くことで自分の意見をまとめたかった」と振り返る。

創業5年目に入った今、「小論文は原点」だという。

「小論文は理想論で、起業してみると現実はなかなか上手くいかないことが多かった。でも、軸をぶらさずに、本当にやりたいことを見定めながら、試行錯誤を繰り返してきた。事業の継続には、創業者の意志が問われる。だからこそ、論文を書いたことが原点となり、今もそれが生きている」と話す。

アゲハでは、F1層(20歳から34歳までの女性)を中心にソーシャルメディアを活用したユーザー参加型商品企画を手掛ける。ユーザーは単なる消費者ではなく、価値を創造する企業のパートナーと位置付ける。

「ソーシャル・ガールズ・マーケティング」をコンセプトに事業を展開する木下さん



6月22日には、アゲハが運営するフェイスブックページで生まれた「SoftBank SELECTION スマホウエア リボンシール」が発売された。スマートフォンの本体やケースに貼り付けてコーディネートを楽しめるリボンのシールだ。

フェイスブックに特設ページを開設し、のべ30万人以上にリーチし、3000人以上のユーザーが「いいね!」やコメントするなど企画に参加した。「洋服や季節に合わせてコーディネートできるスマホアクセサリー」というコンセプトでリボンシールを製作したところ、ユーザーの約9割から支持を獲得した。

まさに、小論文で提案した「マス・コラボレーションによって、自己組織的に卓越したデザインへと収束していく、創発的な企画開発モデル」を具現化している。

木下さんは「論文を書く事は、自分がどのような価値を提供できて、それを通して何がしたいのか考えをまとめる良い機会になる。これから築いていくストーリーの基点になる」と、小論文を書く事の意義を述べる。

■ シンガポールの多国籍な環境に刺激

杉野浩史さん(当時、早稲田大学国際教養学部4年)は、後輩の岡田光太郎さん(当時、早稲田大学法学部3年)とペアで「移民送出・受入社会」を執筆し、2011年に大学生の部で優秀賞を受賞した。2人は、日本人としての誇りを持ちながらグローバル化していくためには、「移民送出・受入社会」の実現が必要だと主張した。

杉野さんはシンガポールにいた岡田さんとスカイプをしながら論文をまとめた



杉野さんは、シンガポール国立大学に2年間留学していた。「移民が約3割を占めるシンガポールでの生活に刺激を受け、ここで感じたものを小論文としてまとめたいと思った」と応募の動機を話す。

杉野さんは、同じくシンガポール国立大学に留学していた岡田さんと意見を交わしていくうちに、「日本の閉鎖した社会に疑問を持ち、多様な人や文化を尊重し合うグローバル化が必要だと意気投合した」という。

2011年6月に帰国した杉野さんは、シンガポールに残る岡田さんとスカイプなどを活用しながら、2人で論文をまとめた。「アイデアが2人分に膨らむので、要点を絞るのが難しかった。でも、お互いのモチベーション維持につながり、一人よがりの意見にならないメリットもあった」と共著の作業について振り返る。

その後、小論文で構想したアイデアを基に学生団体「Bizjapan(ビズジャパン)」を立ち上げた。日本と海外の学生をつなぎ、学生間の国際交流を図るのが目的だ。

2011年12月には、シンガポール国立大学から約15人の学生が来日し、約1週間滞在した。「東日本大震災によって生じた社会問題の解決」というテーマのビジネスコンテストを企画したり、企業訪問や日本の大学生との交流会を行ったりした。現在ではさらに活動の幅を広げ、2012年1月にはシンガポール、5月には北京大学に日本の学生を派遣した。8月には米国シリコンバレーでプログラムの開催も予定している。

杉野さんは、「論文を書くことは、もやもやと感じている社会問題を深掘りし、問題の本質を掴み、具体的に落とし込むために非常に良い機会。学生という立場はニュートラルなので、考えたことを自由にぶつけられる。書くことだけに満足せず、実際に行動につなげてほしい」と期待を寄せる。

■ 池上彰氏、最相葉月氏が特別審査委員に

今年の小論文の共通テーマは、「自分たちの子ども世代に創り伝えたい社会」。学生にも、いずれは自分の子どもたちの世代に社会を譲り渡していくということを意識してもらい、これからどのような社会を築いていくべきか、それに向けて自分たちが何をすべきかについて、前向きに考えてもらいたいという思いを込めている。

コンテストは、大学生、留学生、高校生の3部門がある。文字数は、大学生の部と留学生の部が4500~5000字、高校生の部は2500~3000字。優秀者には最大50万円の賞金が与えられる。募集期間は、6月1日から9月18日まで。特別審査委員として池上彰氏、最相葉月氏も参加する。詳細はコンテストホームページで。(オルタナS編集部=吉田広子、池田真隆)



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