はたらく

「共感」の作り方――スープストックトーキョー代表

2016年1月17日 5:58 PM はたらく--挑戦者たち

スマイルズが手がけるSoup Stock Tokyoが今年2月株式会社スープストックトーキョーとして分社し、独り立ちする。Soup Stock Tokyoの商品は決して安くはないが、女性のファンを獲得してきた。新社長に就任する松尾真継氏に共感を生むブランドづくり、店舗運営について聞いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

松尾氏は「スープ通じて、世の中の人々の体温を上げたい」と話す

松尾氏は「スープ通じて、世の中の人々の体温を上げたい」と話す

若い女性から支持されているSoup Stock Tokyoが生まれたのは、今から17年前の1999年のこと。一号店は、お台場ヴィーナスフォートにでき、今では首都圏を中心に全国に約70店舗展開している。

Soup Stock Tokyoのスープの価格は単品で630円(レギュラーカップ)と、決して安くはない。それでも、女性を中心に支持を受けているのはなぜか。

Soup Stock Tokyoのルーツは、当時三菱商事にいた遠山正道・スマイルズ社長が1997年12月、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社に提案した企画書「スープのある一日」にある。その企画書では、スープというアイテムを通じて「共感」を軸にブランドを展開することが書かれていた。

このアイデアを共に形にしていったのが、株式会社スープストックトーキョーの新社長に就任する松尾真継氏だ。松尾氏は大手総合商社やアパレルを経て2004年、スマイルズに入社。Soup Stock Tokyoの事業責任者として、店舗運営から人材育成、商品企画までさまざまなことに携わってきた。

いかにして、「共感を生むブランド」を作り上げてきたのか。松尾氏は過去に苦難を乗り越えた話をもとにして説明してくれた。

2008年、Soup Stock Tokyoは一部商品で産地偽装されていた汚染米を使用してしまい、信頼が低下、売上も大きく落ち込んだ。社内ではいかにして信頼を取り戻していくかという議論とは別に営業を中心に当面の回復策として、価格の引き下げや、トレンドに合った商品の投入、他ブランドとのコラボレーションはどうか?などの意見もでていた。

松尾氏は「我々は食を通じてお客様の体温を上げることを仕事にしている。目先の回復を普通の飲食店のような考えで行ってはならない。行うべきは、どれだけの時間をかけてでも失った信頼を回復すること。まずは産地・産物に徹底してこだわりぬくこと」と方針を定めた。

方針に従い、一般の飲食店では安価で活用が当たり前になっていた中国産の食材を全廃。その他の食材についても産地まで遡って全てを選択しなおすことを決め、それまでに作り上げてきた50以上のレシピを白紙に戻し、一から商品開発をやり直した。

販売できる商品が激減したことで、店頭では週替わりのメニュー変更などもままならなくなり、売上低下には歯止めがかからない。

しかし、それでも一からのやり直しをあきらめず、コメや一部の野菜については国内の農家を回って直接の人間関係をつくることを継続していった。現在Soup Stock Tokyoで恒例となっている、店長たちが秋田のコメ農家に民泊し田植えや稲刈りを手伝うといった行事もこの流れがきっかけで始まった。自分たちが提供するコメを自分たちで植え付け、刈り取る。手伝いにいった夜は、夜通し産物や商品への想いを語りあうのだ。

人材採用も担当する。「憧れているだけのファンは採用しない」と人を見る目に厳しさを持つ

人材採用も担当する。「憧れているだけのファンは採用しない」と人を見る目に厳しさを持つ

「社員一人一人が産物に掛ける生産者さんの想いを直接感じとることで、店頭での商品説明にも熱が入り、一体感も生まれた」と松尾氏はいう。

その後、産物の選択からやり直したレシピがひとつひとつと増える中、顧客の信頼も回復、店舗あたりの売上はむしろ以前よりも伸びた。また、商品や原材料について語れる社員が増えていったことが、百貨店などで冷凍スープを接客販売する物販型の店舗の開業にもつながった。この店では、信頼関係のある生産者さんに契約栽培してもらった産物や、国内の希少な産物を使った限定商品の販売も行っている。

一般的に、飲食店の商品レシピは企業秘密だが、Soup Stock Tokyoはこれを本にして出版している。松尾氏は、「自分たちのスープは素材選びから始まり、時間と手間暇をかけて作っているもので、人に出して恥ずかしいものや隠すべきことはない。それをお客様にも知って頂きたいし、世の中の体温を上げることを目的としている以上、店舗でスープを食べて頂くことだけが、全てではない」という。

松尾氏自ら、Soup Stock Tokyoのことを「スープ屋であって、スープ屋ではない」と表現する所以はここにあるのだ。今年2月に分社される株式会社スープストックトーキョーの社長に就任するが、「いままで以上に食を提供することに責任とこだわりを持ち、その姿勢を通じて世の中の体温を上げていきたい」と決意を語る。

◆松尾 真継(株式会社スマイルズ 取締役副社長 ※2月1日より株式会社スープストックトーキョー 取締役社長)
1976年生まれ。早稲田大学卒業後、99年日商岩井株式会社(現、双日株式会社)入社。
01年ファーストリテイリングに転職し、野菜ブランド事業立ち上げ等に携わる。
04年に株式会社スマイルズ入社。
Soup Stock Tokyoの商品部長、営業部長、事業統括などを経て08年2月より取締役副社長に就任。
全社の経営を担う傍ら、新規事業の立ち上げや海外展開の責任者も務める。
2016年2月1日に設立する株式会社スープストックトーキョーの取締役社長に就任予定。

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