はたらく

大都市を仮想ライバルに 徳島が「VS東京」掲げ活性化  

2016年7月7日 6:40 PM はたらく--挑戦者たち

ジメジメしっとり、うっとうしい・・・。梅雨シーズンの真っ只中、「地方創生の調査」をテーマに、武蔵大学メディア社会学科松本ゼミ一同は四国の徳島県に向かった。今回紹介するのは「VS東京」という大胆かつ力強いコンセプトを掲げる、徳島県政策創造部地方創生局地方創生推進課の試みである。(武蔵大学松本ゼミ支局=渡部 史哉・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

そもそも、徳島県ってどこ?などと疑問に思っている読者の方もいるだろう。それもそのはず、徳島県は都道府県別の認知度が2年連続最下位になっているほど、知名度が低い。筆者は隣の愛媛県出身だが、徳島県に行ったことは小さい頃に1回しかない。そこでまずは徳島県の概要について少しだけ簡単に説明する。

玄関口である空港では徳島県の伝統阿波踊りの銅像が観光客を出迎える

玄関口である空港では徳島県の伝統阿波踊りの銅像が観光客を出迎える

人口は約75万人で(平成28年5月1日現在)面積はおよそ4146㎢。阿波踊りや鳴門の渦潮、大塚国際美術館などが知られている。同県出身の有名人といえば、作家で尼僧の瀬戸内寂聴さんや歌手のアンジェラ・アキさんなど。

徳島県が掲げる「VS東京」とはどういうものなのか。はっきりさせるため、徳島県地方創生推進課担当の加藤貴弘氏に話を伺った。

徳島県における地方創生について語る加藤貴弘氏(徳島県地方創生推進課担当)

徳島県における地方創生について語る加藤貴弘氏(徳島県地方創生推進課担当)

加藤氏に「VS東京」の経緯についてたずねると、「地方の都道府県を参考に真似をして、同士を比較し、違いをアピールしても、それは微差でしか無い」と答えた。隣の香川県は「うどん県」と打ち出しているが、「二番煎じをしても意味はない」と加藤氏。

そこで、日本の大都市東京を仮想ライバルとすることで、大都市には無い価値を見つけ、それをアピールしていくことで、徳島を盛り上げていこうと決めた。

このコンセプトには、このような目標・願いが込められている。「戦うということに対して、各方面の人から批判・クレームが来るが、あくまで戦い争って東京を打ち負かすのではなく徳島の新たな価値観を生むためだ」と加藤氏は補足する。

東京に対抗するために、徳島は10の宣言を挙げている。

①ここなら安心して子育てできる

②歳をとってもいきいきと輝ける

③しなやかに災害に立ち向かう

④山奥でも速い、日本一のネット環境

⑤女性が自分らしく生きられる

⑥この地で生まれる、世界を変えるイノベーション

⑦日本の原風景を残していく

⑧この土地の「食」は、幸せをもたらす

⑨世界に誇れる文化を発信する

⑩「おもてなし」のルーツがここにはあること。

①は、徳島県は会社からの平均帰宅時間が18時02分で、これは全国トップを誇るものである。②は高齢の農家の方がPCを巧みに操ることで有名ないろどり農家に代表されるように、徳島は高齢者が多い分、他の高齢者に負けたくないという気概がある。

③は、地上デジタル放送(フルセグ)を活用し、充実した災害情報を発信・設備が整っているということである。④はCATV(ケーブル放送)普及率が1である。⑤は女性社長率が全国トップクラスである。⑥は青色LEDの発祥などである。⑦はアレックス・カー著の『美しい日本の残像』で紹介されている祖谷の原風景。

⑧は瀬戸内海のもたらす新鮮な海鮮や豊かな自然がもたらす自然の幸。⑨は、徳島全域で活発で、日本で最も有名な踊り、「阿波踊り」などの良き文化を世界へ発信していく。⑩は霊山寺から始まる四国お遍路八十八ヶ所巡礼などである。

「VS東京」の意志の強さが実感できる名刺の裏面

「VS東京」の意志の強さが実感できる名刺の裏面

加藤氏自身に徳島の良さを聞いてみると、「人の温かさ」と答えた。おすそ分けのような近所同士の交流があり、徳島に引っ越してきた人に対しても、とても親切にしているという。兎に角、都会では見えにくい「人とのつながり」がはっきり見えるのだ。

「地方創生」で問題視されている都会への人材の流出。これは徳島県とて例外ではない。徳島県独自の調査によると、現在75万人の人口が年々減少していき、2060年には42万人になってしまう。

それに伴って地域での過疎化は54.2%で限界集落の割合は35.5%。これは全国平均の2倍以上の数値を表している状況である。その厳しい現状の中で、徳島は外部の企業に場所を提供する「サテライトオフィス」をつくり、ネット環境を充実させた。那賀町には、ドローン特区もある。まさに東京に本気で立ち向かおうとしているのである。

最後に加藤氏は県庁の在り方をこう語った。「県庁は、徳島に活気をもたらそうとする団体や人をつないでいき、発展させていく。そういう場所で在りたい」と。

再度繰り返すが、筆者自身も愛媛県生まれで、東京に上京してきた身である。東京には色々な遊べる場所や食べ物など、とにかく全てが揃っているはずだと憧れ、東京へ来た。

1年経った今、何を感じるかというと、確かに東京には多種多様なモノ、ヒトがある。けれど、「確かな人のつながり」が不足している。

今回、東京を離れ、徳島を訪れ、しみじみと実感した。偉そうに言える身分ではないが、「地域創生」は、人と人が深く交わっていくことで、地味だがゆっくりと着実に、確実に達成されていくと感じたし、そうなっていくと信じている。

(参考)

「VS東京」について

徳島県庁について

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