はたらく

オープンオフィスで人を呼び知恵をつなげる 神山町

2016年7月21日 1:57 PM はたらく--挑戦者たち

徳島県神山町では、地域活性化策として、サテライトオフィスの誘致やオープンオフィスの設立などを行っている。このたびは、NPO法人グリーンバレーが運営する神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスを訪れた。県外から人を呼び、知恵をつなげていく動きが起きている。(武蔵大学松本ゼミ支局=牧野 伶美・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

神山町オープンオフィスへ

神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスはオープンオフィスになっている

NPO法人グリーンバレーが誕生したのは2004年のこと。1997年の徳島国際文化村プロジェクトに伴い、住民目線の意見を取り入れられるようにと、国際文化村委員会が設立され、その一環で設立した。。

環境と芸術を軸に活動している。道路清掃のボランティアにスポンサーを集め、清掃した道路にスポンサーの名前が入った看板を立てるというアドプトプログラムや、アーティスト・イン・レジデンスをコンセプトに活動している。

様々な地域でアーティスト・イン・レジデンスは行われているが、特徴は、アーティストと地元の人で密な関係を築いていくことにある。

見学に来る観光客に喜んでもらうために有名なアーティストを呼んで作品を作ってもらうには、資金が足らなかった。そこで、観光客ではなく、制作に訪れるアーティストに満足してもらおうと活動を始めた。

作品に使う木がなくなれば町の住民が切り、、作品作りに協力し、密な関係を築いていった。活動を続けていくうちに、自腹で神山にやってきて作品作りをしたいというアーティストも現れ、地域活性化につながったという。

情報を発信するために「イン神山」というサイトを立ち上げた。総務省の地域ICP利活用モデル構築事業の一環として誕生した。

イン神山のなかには、「神山日記帳」「神山でアート」「神山で暮らす」など様々な項目がある。その中で一番閲覧されているのが、空き物件などを紹介している「神山で暮らす」だ。

そこから、移住を考えている人が多くいることが分かり、誰にでも来てもらうというより、将来神山に必要になる働き手や起業家を逆指名する、ワーク・イン・レジデンスという新しい考え方を取り入れた。

現在から未来、ぼんやりしたものを数値化することで逆算して足りないものをクリアにしていき、過疎化の現状を受け入れる。これを「創造的過疎」と表現している。仕事をもった人に移住してきてもらうことで、神山が抱える過疎化や少子高齢化、地域経済の衰退の克服を目指している。

■失業者対象の塾

神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスにはリレイションという会社が利用している。同社は、「地域滞在型人材育成事業」「KATALOG」「デザイン・編集」そしてこれらを包括して「地域マネジメント」を行う。地域滞在型人材育成事業の中心プロジェクトが、2010年に始まった「神山塾」。失業している人が神山に半年間滞在し、自分の暮らし方や生き方を見つめ直して、これからの人生に生かしていくというプログラムである。

リレイションのクリエイティブディレクター杉大輔さん

話を聞いたリレイションのクリエイティブディレクター杉大輔さん

専門的な知識を教えるというより、自分が何をやりたいのか自分がどう在りたいのかを考えてもらう期間だ。企画書の書き方やミーティングの進め方から、実際にチェーンソーを使って間伐の仕方を学んだり、自分たちで企画書を書いてイベントを行ったりする。半年間みっちりやるそうだ。

第7期が2016年3月に終わり、次の第8期が9月から行われる予定。今まで93名が卒業し、48%が神山または徳島県に残っている。就職率は75%である。中には神山で起業した人もいる。このような人々が新しい町をつくりつつある。

「KATALOG」というのは、「語る」「くつろぐ」「記録(LOG)する」を組み合わせた造語で、リレイションが発信しているブランドビジョンである。2014年6月にKATALOG MAGAZINEを創刊した。日本に古くからある暮らしや知恵を次の世代へと伝えていきたい、バトンを繋いでいきたいという思いが込められている。

リレイションは地域マネジメントの一環としてサテライトオフィスの誘致事業を行っている。実際のサテライトオフィスを訪れることができた。

一つ目は「えんがわオフィス」。東京に本社をもつプラットイーズのサテライトオフィスで、BCP対策を目的に2013年7月から業務を開始した。

えんがわオフィスの外観

えんがわオフィスの外観、ガラス張りになっている

4Kや8Kをつかった映像アーカイブ業務やTV放送に関する業務を行っている。神山の豊かな原風景をこれからもずっと残していきたいが、それは不確実である。今撮れるものを残しておこうと、「神山アーカイブス」を制作している。

ガラス張りでオープンなオフィスは、社員と町の人々が自然と集い、あたたかみのある繋がりの場になっている。

二つ目は名刺のクラウド管理などを手がけているSansanのサテライトオフィス。

Sansanのサテライトオフィス

Sansanのサテライトオフィス

Sansanでは、神山だけでなく京都や名長岡などにもサテライトオフィスを置いている。各拠点で別の業務を行うのではなく、東京チームのメンバーの一人として地方のサテライトオフィスにいる。

各地にサテライトオフィスがあることは、働き方の選択肢を増やし、東京には出てこられない何らかの事情がある人材を確保するという目的ももっている。

Sansanの新入社員合宿はこのサテライトオフィスで行われるそうだ。ロケーションにこだわらず、どこでも仕事はできるということを、初めに叩き込む。最近は地方出身の新入社員が増え、突然東京と比べて不便な環境に送られてもひるまない人が増えているのだとか。

サテライトオフィスができたからといって、町にお金が落ちるわけではない。サテライトオフィスに常駐する人がいて、神山で生活する。本社から来た人が神山で買い物をする。

多くの人がサテライトオフィスの視察に来る。こうして交流人口が増えることに意味がある。神山町の人たちがもっている知恵と、外から来た人たちの知恵が混ざり合ったときに、今まで町になかった新しいものが生まれる可能性を秘めている。

そこに何があるかではなく、そこにどんな人が集まるか。神山では、人が人を呼び、旧住民と新住民の知恵や経験が融合し、新しい町がつくられている。

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