はたらく

「起業したい」だけだった僕が児童労働根絶に奔走する理由

2016年10月27日 4:33 PM はたらく--挑戦者たち

就職活動で、「ソーシャルビジネス」を決め手に会社を選んだ若者がいる。企業の知名度や規模ではなく、社会問題の解決に挑みたいと門を叩いた。彼/彼女たちはなぜ社会問題に関心を持ったのか。期待と不安が混ざった社会起業家の卵たちの素顔を追う。

この特集では、社会起業家のプラットフォームを目指すボーダレス・ジャパン(東京・新宿)に就職した若者たちにインタビューしていく。同社は、「ソーシャルビジネスしかやらない会社」と宣言し、11の事業を展開。若手社員の育成にも力を入れており、早い時期から裁量権の大きなプロジェクトを経験させ、新規事業には最低3000万円の投資を行う。

インタビューでは、社会問題に関心を持ったきっかけや、入社後に経験したプロジェクトのこと、そしてプライベートな質問まで投げかけた。

第四弾は、新卒入社7年目、CORVa(コルバ)社 社長の中村将人さんにインタビューした。中村さんは、創業3年目のボーダレス・ジャパンに新卒で入社し、多国籍シェアハウスを運営するBORDERLESS HOUSE社に配属。入社2年目からバングラデシュの新規事業を開発し、6つの事業立ち上げに挑んだ後、児童労働根絶を目的としたアパレル事業「CORVa」を立ち上げた。

 同ブランドは、「親子・きょうだいで楽しむおそろい」に特化した服を揃え、ECの他、国内5店舗で販売している。バングラデシュの自社工場でも生産を行い、貧困層を積極的に雇用している。家庭の収入で十分な暮らしができず、働かざるを得ない子どもたちを減らすため、親の収入を増やすことが目的だ。

 今でこそ「児童労働根絶」のために奔走する中村さんだが、入社当初は「デカいビジネスを創りたい」と考えてはいたものの、「解決したい特定の社会問題」はなかったと言う。なぜ、新卒でボーダレス・ジャパンを選び、どのように「見過ごせない社会問題」と出合ったのか、これまでの経緯を聞いた。

―中村さんは、ボーダレス・ジャパンの新卒メンバー「第1号」でもあるんですよね。どんな大学生活を送っていたんですか?

中村:学部で勉強した記憶は…ないですね。1年生の頃なんかは、小学校からずっとやっていたテニスを続けたくてサークルに入って、飲み会ばかりの毎日でした。(笑)

ただ、2年生の時に「このままじゃいけない」と思うようになりました。経済学部にいたんですが、そこの友達がつくった投資サークルに入って、投資の勉強を始めました。そこで、経済・ビジネスって面白いと思ったんです。

―留学もしたそうですが、もともと海外に行きたいと思っていたんですか?

中村:そうですね、高校生の頃から留学を考えていました。留学と言っても単なる語学留学では面白くないので、大学3年生の後半から1年間、留学+インターンシップのプログラムでシアトルに行きました。これが、自分にとって大きな転機になりましたね。

留学先のホストファミリーと中村さん

留学先のホストファミリーと中村さん

―どんな出来事があったんですか?

中村:シアトルはマイクロソフトやアマゾンの本拠地があったり、ベンチャー企業が多数あったりと賑やかで、一流のビジネスマンとの出会いがいくつもありました。起業しているクラスメイトもいて。

それまで父のようなサラリーマンという生き方が当たり前でしたが、彼らとの交流を通して「”働く=会社員になること”だけじゃない、起業して自力で食べていく生き方も良いな」と思いました。また、インターンで市の観光課に入って、イベント企画やPR活動をやりました。メンバーは良い人ばかりでやっていることも楽しくて、「ゼロから何かを創ることが本質的に好きだ」って実感したんです。

―帰国後から、卒業したら起業しようと思っていたんですか?

中村:いや、就活の時は、テレビ局を受けました。テレビ番組の企画はまさにゼロからのモノづくりだし、皆が見るものだから影響力も大きい。そんな理由で片っ端から受けて、結果は全滅。その時、「神様が起業しろって言ってるんじゃないか」って都合良く解釈したんですよ(笑)。

それで、留学を共にした友人と一緒に、起業することにしました。

―どうやってボーダレス・ジャパンを知ったんですか?

中村:偶然でしたね。友達が「起業するなら、まず起業した人の話を聞こう」と言って、たまたま留学プログラムを通じてボーダレス・ジャパンの社長(田口一成代表取締役)に会うことになって、自分もオマケのようについて行ったんです。

―起業を考えていたのに、なぜボーダレス・ジャパンに入社したんですか?

中村:訪問するまでは、入社する気は全くなかったです。起業準備で様々なビジネスマンからアドバイスをもらって、市場調査もしていましたし。でも、社長と話したら物凄く面白かったんですよね。

創業間もないベンチャーなのに、「今はBORDERLESS HOUSEしかないけど、社会に本当に必要な事業を最低でも1,000事業創って、社会問題を解決していく」って大風呂敷を広げていて。

会った当時は潰れそうなほど経営が大変でそんなことを言っている場合じゃなかったって、入社してから聞いたんですけど(笑)。

ともかく、「面白くて社会を変えられる事業を自分で創れそう」だったので、まず2、3年修行しようと思って入社を決めました。

―中村さん自身は、解決したいと思う特定の社会問題があったんですか?

中村:これ!と思えるものは、正直、なかったですね。どうせやるなら「人のためになること」「デカいこと」、この程度でした。いま振り返ってみると、祖父や小さい頃の友達が障がいを持っていたことや大学生活中の留学生との交流を通して、なんとなく日本のマイノリティを意識していたと思います。とは言え訪日外国人・留学生向けのサービスで起業しようとした程度で、「面白い会社で修行する」くらいの考えで入社しました。

―入社してからの話を聞かせてください。

中村:当時はシェアハウス事業しかなかったので、最初の半年は、ハウスマネージャーとして入居者の対応をしました。事業を立ち上げたくて入社したので、肩透かしをくらったような気持ちもありましたね。

でも今は、そこで学んだ「お客様にどう満足してもらうかを考えて高速で実践しては修正する」という一連の流れが、ビジネスの根本なんだと思っています。半年が過ぎてからは、マーケティングなど様々なプロジェクトに関わって、責任者になる機会もありました。

―バングラデシュに行ったきっかけは何ですか?

中村:入社2年目の途中に色々なご縁があって、会社として、バングラデシュの貧困問題解決に取り組むことになったんです。僕は当時担当だったプロジェクトが一区切りついていたので、社長と一緒にその新規事業開発に取り掛かって、ビジネスプランをいくつか持ってバングラに行きました。

その1つの「養蜂」をやろうとして通訳の人に現場を案内してもらったんですが、その人が、今バングラデシュの代表を務めているファルクさんです(ファルクさんは、バングラデシュで革工場、アパレル工場を経営。貧困層を中心に雇用している。2016年10月時点で、400名以上を雇用)。

案内してもらううちにファルクさん自身も「バングラの状況を変えたい」と真剣に考えていることが分かって、そのままボーダレスに入社することになって。それ以来、僕の事業はファルクさんと二人三脚で進めてきました。

バングラデシュで養蜂事業を模索していた時の写真

バングラデシュで養蜂事業を模索していた時の写真

―養蜂の事業はどうでしたか?

中村:養蜂で採れたハチミツの商品化自体はスムーズに進んで、お酒として販売するために香川の酒蔵と打ち合わせをして、パッケージも作って、ハワイで販売することになっていたんです。

でも、途中で止めました。この事業はバングラの田舎で暮らす、農業で十分な収入を得られない農家の副収入をつくることが目的でした。家の庭に養蜂箱を置き、採取したハチミツを日本でお酒にするモデルだったんです。ところが、生活が劇的に変わるほどの収入にはならず、雇用の人数も増やせなかったんですよね。

ボーダレスは「事業として儲かるか」も重視しますが、ソーシャルインパクトという指標を一番大切にします。貧困問題なら、その状況から抜け出した人数や収入の変化・継続性がソーシャルインパクトです。どれだけ儲かっても、これが小さいものはやりません。

その後は、直接雇用で収入を増やすために色んなビジネスをやろうとしました。木のおもちゃ、スーパー、ココナッツ。パン屋も考えたんです。農家に小麦を育ててもらって、クロワッサンを作って売ろうと。ファルクさん、オフィスでパンを焼いたりしていました。(笑)

ただ、どのビジネスも大きなソーシャルインパクトは見込めなかったんです。

1度、マクロな視点に立って「日本人にバングラの社会問題を知らせる」という目的でスタディツアー事業もやりました。宿泊したり、ガイドを頼んだりすることで、雇用にもつながるなと。

でも実際にやって、スタディツアーで「解決したい問題」に直接的かつ大きな影響を与えるのは難しいと思いました。なので、「直接雇用&その地域の強みを活かして世界で通用する商品・サービスを創る」方針で、3年前にアパレル事業のCORVaを立ち上げました。

2013年3月のスタディツアーで、参加者と。後列1番右が中村さん。前列左から3番目がファルクさん

2013年3月のスタディツアーで、参加者と。後列1番右が中村さん。前列左から3番目がファルクさん

―なぜ、児童労働に目を向けたんでしょうか?

中村:忘れられないのが、初めてバングラに行った時のことです。宿泊していたホテルの前に3歳くらいの男の子がいて、その子は親に捨てられて帰る場所がなかったんです。この状況に、大きな衝撃を受けました。その後も調査の過程で僻地に行くと、貧しい地域ほど医者がいないしお金もないから、病気になると治しにくいことが分かりました。

例えば父親や母親が病気になると、働き手が不足します。大人も子どもも皆働いて、総動員で家計を支えるんですよね。だから子どもは学校へ行けず、大人になっても日雇い労働しかできない。まさに負の連鎖です。「神様なんでだよ!」って思わずにはいられないほど悲惨な状況が、バングラにありました。

そういう場所って、子どもの目が輝いていないんです。夢とか幸せとか考える間もなく、ただその日を生き延びるために、与えられた作業をこなすだけで。だからまずは、子どもが働かなくて良いだけの十分な収入を親に約束できる仕事を創りたいと思いました。

-現実を目の当たりにしたことが大きかったのですね。

中村:そうですね。「デカいことやってやる」と気負って真剣に走ってきたからこそ、バングラの一つひとつの出来事が衝撃的で、何とかしなければ、と思うことが多くて。結果、本当に人々の生活が変わるインパクトを出してやる!と心の底から思うようになりました。

―ここまで様々なビジネスを立ち上げてきて、どんなことが大変でしたか?

中村:今が一番大変かもしれません。CORVaはエプロン屋、きょうだいのおそろい服、親子のおそろい服とコンセプトを変えながらビジネスを続けてきて、実店舗も5店舗出店しているものの、まだバングラで多くの人を雇用できていないんです。

ここから雇用の数をどう増やすか。苦しい状況を打開しなければいけません。でも、CORVaの理念に共感してくれた素晴らしい仲間と頑張れるのは本当にありがたくて、自分の経営者としての力量を早く伸ばさないと、と痛切に感じています。

―中村さんが入社した当初から、ボーダレスは大きく変わってきたと思いますが、ボーダレスはどんな会社ですか?

中村:入社した当初と違って、解決しようとしている社会問題は国内外の貧困、差別・偏見、環境、難民と様々ですし、シェアハウス、農産物、皮革/アパレル製品、リサイクル/リユース、物流など、ビジネスモデルや商品/サービスの幅も広がりました。

入社1年目から事業を立ち上げる仲間もいて、解決したいと思う社会問題とそれを解決できるプランがあれば、いきなり事業を創れる環境が整ってきています。

ボーダレスで事業を創る場合、会社のお金=仲間が頑張って生み出したお金や事業ノウハウを活用する分、自分でやるより更にチャレンジングかもしれません。自分への甘えが許されないのはもちろん、より速く、高い確度での成功を求めていくので。

周りからのプレッシャーではなく、社会にインパクトを出す者、そして、ボーダレスという起業家プラットフォームを使う者としての責任ですね。だからこそ、独立してやるより圧倒的に成長できるし、速く結果を出せると思います。

自ら店頭に立つことも

自ら店頭に立つことも

―最後に、「社会を変えるビジネスを自分で創りたい」という人へメッセージをお願いします。

中村:本当にビジネスを創りたいなら、実際に立ち上げる経験を積むのが一番の近道だと思います。ゼロからビジネスモデルを考え、実行プランを練り、仲間を集めて組織を創ること、それを全て自分で決めるのは、リーダーの立場じゃないとできないし、やってもそんな簡単に行くもんじゃない。だから、機会があるなら、絶対にやった方が良いです。

事業家や何かを極めたプロフェッショナル等、尊敬できる先輩たちが常に身近にいることも大切です。僕の場合、どんな風にリーダーシップをとれば良いか、どんな風にモノゴトを捉え、進めれば良いか、そんな思考やスキルを横から盗んで自分で試せたことが、事業を創る上で大きなプラスになっています。たまに会う「相談相手」というレベルでなく、同じフロアでガンガンやってて、何を話しているか全部聞こえるぐらいの「近さ」が一番良いですね。

デカイことやりたい、世の中に本当のインパクトを出したい、という人がいたら、ぜひ「事業家」仲間として一緒に頑張りましょう!

―ありがとうございました!

聞き手:株式会社ボーダレス・ジャパン 採用担当 / 石川えりか

新卒では教育×ITのベンチャー企業に入社。営業→人事を経て、入社4年目の春、ボーダレス・ジャパンに転職した。1人でも多くの社会起業家を輩出するため、そして生き生きと働く社会人を増やすため、様々な会社を見てきたフラットな目線でボーダレス・ジャパンを伝える。

3度の飯より、ボーダレスとスワローズとロック。ひたすら追いかけて日本中を走り回る変人。結婚3年目、もちろん家庭が一番大切です。時間じゃない、気持ちだ!

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