はたらく

【小説】電園復耕 69歳の学生から20代の学生たちへ(58)

2017年3月14日 11:36 AM はたらく--挑戦者たち

タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆バイエルンの村2

窓の外は3日前から降り続いているこの時期にしては冷たい雨だった。気が滅入った。いっそみんな流れてしまった方が、、、と思った牧師の脳裏に大水に浮かぶノアの方舟が見えた。この話をしよう。

そして日曜日の説教はノアの方舟の話だった。「すべてが洗い流されることによって全てが新生する」牧師の話に礼拝に来ていた村長はその話に聞き入った。「発想をがらりとかえよう」ダメになった観光や酪農にしがみついていてはだめだ。原発ではない新しいエネルギー産業を作ろう。礼拝が終わり、皆と一緒に教会を出ると雨が止んでいた。

 

教会の前は牛のいなくなった牧場で、空の牧舎の上に三枚のソーラーパネルが雨にぬれていた。それを見て村長はこれが村を救う道となると思ったそうだ。

Are you sure? 啓介はリズに確かめた。話がドラマチックすぎるからだ。「誇張されてるかも知れないわね」リズの日に焼けた顔の目じりの皺が微笑んだ。

しかし大事故を機会に村長が大逆転を仕掛けたことは事実のようだ。それがマンネリを抜け出すただ一つの道だったことは確かだっただろうと啓介は考えた。村長は牧舎の上にソーラーパネルを設置した業者と会いたいと思った。

色々聞くうちにその業者はミュンヘンの中小企業だったことがわかった。月曜日の朝、村長はその会社の社長に電話した。「村の寄合所の屋根にパネルを取り付けてくれないか。金は後払いだけど」。

「有る時払いの催促なし」なんてドイツにあるの?「有るわけないでしょ。でもその社長さんは工事をしたそうよ」

「親切なのか、先見の明があったのか」

「でも工事が済むとすぐに電気が売れた。だから売れた分をそっくり業者に払ったのよ」

そのあまり多くもない振り込み記録をその業者は銀行に持って行って「これを担保に6年間金を貸してくれ」と頼んだ。

何回かのやり取りで銀行はやっと日本円で2000万円ほど設置会社に融資した。社長は村長に持ちかけた。

村の土地を貸してくれ、我が社の事業として発電したい。発電が始まったその年の春は天気が良くて、寄合所と村の空き地は予想を超える発電成績を上げた。

返済が早まるのを見ると銀行は、もっと貸したいと言って来た。村長の家の屋根や、荒れ果てた麦畑の後にソーラーパネルが並ぶことになった。

村から出て行った若者が呼び戻され、建設が進んだ。若者は都会で知り合った友人を村に呼んで建設を手伝わせた。止めていた民宿が再会し、煙突から煙が出始めた。村以外の人も村の方針を知り、村の発電に投資したいと申し出た。村には税金が集まり、財政が立ち直った。

いまではその村は独自の貨幣を発行する程豊かになった。「私はアメリカでの役所の仕事を捨てて、ここで2年働いてお金を少し貯めた。それでこの話はおしまい」とリズは言った。台所から飯が炊ける臭いがした。

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