はたらく

ラッシュジャパン――テーブルクロス城宝薫のCSV企業訪問(前)

2016年3月1日 9:44 AM はたらく--エシカルな働き方

こんにちは、城宝薫です。私は現在、立教大学経済学部に通う大学4年生です。そしてテーブルクロスを起業して経営者もしています。テーブルクロスは「利益の創造と社会への貢献を同時に実現する文化を創りたい」との思いで立ち上げ、飲食店予約アプリサービスを展開しています。

これは従来のサービスが固定化した高コストの広告モデルであったのに対し、一人の予約に対してのみ広告費用が発生する「成果報酬型」を導入したものです。そして、1人が予約をすると1名分の途上国の子どもの学校給食が支援されます。こうした利益と社会貢献の両立を目指す活動はCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)と呼ばれています。

私の起業は日が浅く、こうした事業への想いはあっても、まだまだ手探り状態です。そしてCSVはこの日本ではまだあまり知られていません。そこで、既にCSVに取組んでいる企業の皆さまにインタビューをさせて頂き、企業のお考えや取組みを紹介することでこの活動を日本に広めたいと思っています。連載は私が大学生である2016年3月まで行う予定です。

今回は前回のキリンさんに続く五回目として、LUSHさんへのインタビューをご紹介します。様々な社会課題に対して会社規模でキャンペーンを行っている、株式会社ラッシュジャパン チャリティ・キャンペーンマネージャー 高橋麻帆さんのお話をまとめましたので、ぜひお読みください。
(※テーブルクロスはコチラ。アプリはコチラ

lush

■LUSHは持続可能な社会を全社員で追及する

城宝「本日は、お忙しいなかお時間をいただきありがとうとございます。LUSHさんの企業理念、御社が考える社会的責任(CSR活動)についてお話をお聞かせください」

高橋「はい。私たちの信念にも通ずる部分ですが、私たちは商品が価値あるものだと信じています。そして、適正な利益を得ること、お客様の価値観を尊重することを大切にしています。創立当初から私たちの商品を通して、人や動物や自然環境が持続可能に共存できる社会を目指していきたいと思っていました。そのための努力はCSRという部署でもなければ、社会貢献という考え方でもなければ、LUSHに所属する全ての部署の全社員によって追求し続けるものという考えで始まっています」

ラッシュジャパン チャリティ・キャンペーンマネージャー 高橋麻帆さん

ラッシュジャパン チャリティ・キャンペーンマネージャー 高橋麻帆さん

城宝「社会貢献は部署単位ではなくLUSHに関わる全員で取り組むべきという考え方なのですね。LUSHさんは社会貢献に取り組む事業を経営するという立ち位置なのでしょうか?」

高橋「いいえ、自分たちでは「社会貢献」という言葉で表現することはありません。私たちを取り巻く環境や社会があるからこそ企業活動ができていて、社会に課題があるのであれば、企業やビジネスにも同様に課題があるという考え方でいます。つまり、全員で様々な角度から社会課題に取り組む、そして適正な利益を得続けることによって社会との繋がりを持とうと考えています。その一つの特徴として、サプライチェーンを自社で全て持つ結果に至りました」

城宝「サプライチェーンを自社で全て持つというのは簡単にできないことで、LUSHさんならではと思います。それは、LUSHさんに関わる人と、様々な角度から社会課題の解決に向かうためだからなのでしょうか?」

高橋「原材料の調達に関して言うと、絶対的に動物実験や児童労働には関わらない、環境への取り組みを追求するなどという様々な観点からエシカルな買い付けをしています。そして、フェアトレードラベルが付いているから良いというのではなく、自分たちが直接サプライヤーと繋がって本当に児童労働が行われていないかを見るスタイルが、CSRという部署だけではなく会社全体を通してエシカルを追求する一つの例です」

城宝「LUSHさんの会社全体で、そして自ら見ながら判断されるスタイルはなかなか真似できないと思います。とても素晴らしいですね」

ーjoho’s eyeー
社会貢献に対する考え方を伺った際に、自社のサプライチェーン全体を抱えて徹底した解決に取り組むスタイルに驚きがありました。企業には株主や従業員などステークホルダーがたくさんいます。そのため、利益を生むことが重要視されている関係内で、サプライチェーンを自社で全て抱える企業は少ないように思います。LUSHさんは絶対的な信念があり、その取り組みは関係会社まで浸透していることに驚きの連続でした。

■「ビジネスとして割り切る」という考え方はない

城宝「これまで事業と社会貢献の一体に取組む様々な企業にインタビューを行ってきたのですが、CSRの考え方を社内全員で取り組むということはとても難しいことだと感じました。そのなかで、LUSHさんでは会社全体で課題に取り組むために行っていることはありますか?」

高橋「まだまだ私たちも今後成長していく段階ではありますが、みんなで取り組んでいくために大切にしていることはあります。それは、「オーナーシップ」です。自分たちの会社はこういうものなんです、こうあるべきなんです、ということを決めて、発表するスタイルではなく、何のために企業活動をしているのかという”原動力”自体をみんなと共有し続けることによってインスピレーションを共有するようにしています。やはり、最終的には一人一人がどういう風にLUSHを成長させていきたいかということを考えていくことが大事だと思います」

城宝「オーナーシップという考え方を、私自身初めて聞きました。具体的にはどのような活動になるのですか?」

高橋「オーナーシップとは、自分の役割や責任を明確にした上で、成功しても失敗しても自分で責任を取るという考え方を意味します。そのためには、人からどう行動すべきと指示を受けるのではなく、自ら何が正しいかを考える必要があります。例えば、三ヶ月に一度、マネージャーミーティング(店長会)を行っています。全国のLUSH店舗のマネージャーが一堂に集まり、何で私たちがこのビジネス活動をしているのかを共有する場です。企業の会議というと、売上げの話や経営戦略の話があると思いますが、LUSHの場合は次々にNGOのスピーカーが登場したり、国会議員が来たり、リアルなNPOのシンポジウムなのではないかと思うような会議をしています。先日もイギリスに行ってきたのですが、数日間の会議のなかで、私たちが気にかけている様々な社会課題について、またLUSHの活動がこんな風に社会へ発展したんだということの、インスピレーショナルスピーチが沢山ありました。会社としてこう行動するべきだというのではなく、このような会議を通じて一人一人に感じてもらうというスタンスが私たちらしいと思っています」

城宝「それはまさにNPOのシンポジウムと同じですね。そのような場を設けることで、皆さんの課題に対する考え方も深まるんですね。私からみると、様々な課題解決に取り組むなかでもLUSHさんは動物実験の廃止については一層力が入っているようにも感じていました。それは比較的力を入れている分野でもあるのですか?」

高橋「化粧品のための動物実験を世界中から無くすということは私たちのライフワークだと思っています。日本では規制の法律がないので、基本的には安全性確認は企業責任になるんですよね。2012年からは、ラッシュプライズという、動物実験廃止を目指した活動や代替法の研究をしている個人や団体を称える賞金も行っています。代替法を広めていくこと自体が、動物実験をなくすことに繋がると考えているからこそ行っています」

店頭に展示されている動物実験反対のPOP

店頭に展示されている動物実験反対のPOP

城宝「会社全体で取り組む姿勢がこれほど浸透していると、働いているスタッフも嬉しいですよね。ここまで話を伺うなかで、「企業が取り組む社会貢献」の価値観が少しずつ変わってきました」

高橋「そうですね。度々になるかもしれないですが、私たちの場合は、利益があるから社会貢献ができるという考え方ではないです。モラルとして間違っているのであれば、正しいものでなければ行わないという思いで行っています。そのためにビジネスとして割り切るという考え方はLUSHでは通用しません。倫理や社会に反すると思われる行為はとりません」

城宝「やはり、ここまで信念を持って、徹底した取り組みを行うとコストもかかる印象がありますが、実際はどうでしょうか?」

高橋「もちろん、コストも時間もかかる場合もあると思います。具体的な例で言うと、キラキラした”ラメ”について、コストも時間もかけた例もあります。一般的に市場に出ているラメは、マイクロプラスチックでできているんですが、近年では海洋汚染の影響がある事実が分かってきており、ラメのキラキラを残したままでマイクロプラスチックを使わない方法がないかということを2〜3年かけて徹底的に開発しました。そして最終的には自然の鉱物「マイカ」というミネラル粉末を使って実現しました。コストも時間もかかるかもしれないですが、自分たちがNOと思うものについては自分たちが納得いくまで開発することを行います」

城宝「コストも時間もかかるなかでも、社会的、倫理的に正しいかどうか、個人が持っている倫理観は会社に入っても通すべきだという考えでLUSHさんは活動されているのですね」

ーjoho’s eyeー
コストや時間がかかってもビジネスで割り切ることはしない。LUSHさんには強い信念があると感じました。社会課題に取り組むにあたって、CSRという形でもなければ、ひとつの事業部という形でもない。企業全体で取り組む話を聞いて、社内で浸透している姿に驚きがありました。店長会が経営会議ではなく、NGOのシンポジウムのような形にすることにより、全体で原動力となるインスピレーションを共有できることは特に勉強になりました。

■店舗は最大のメディアで変革の起点

城宝「個人の倫理観を大切にして社会全体へ広めていくことは、大変なことが多いように思います。実際にはどのように広げていかれたのですか?」

高橋「ひとつの取り組みを行うなかでも、私たちの伝えたいメッセージはブレないように気を付けています。ですが、課題に対してYESかNOかの考え方を持つ一方で、まずはお客様にどういう考えかを問うてみることもひとつのやり方ではないかと思っています」

城宝「YESかNOか問うやり方ですか?」

高橋「はい。キャンペーンをやるなかでメッセージを明確にしていなければならない一方で、例えば先ほどのマイクロプラスチックの例で言うと、最初から「NO!マイクロプラスチック」というのではなく、「環境に優しいラメは何だと思いますか?」などと問いかけをしてみることもできると思います。どういう形でお客様に届けるか、”お客様と一緒に考える”ということは日本のコミュニケーションスタイルとして意識していることでもあります。そのなかでも、自分たちの信念をもとに、メッセージに一貫性を持たせることは常に意識しています」

城宝「私もお客さまとのコミュニケーションの取り方について悩むことが多いですが、コミュニケーションの取り方で気を使っていることはありますか?」

高橋「私たちも試行錯誤しながら学んでいます。以前の店長会で、イギリスの緑の党の議員さんが、「LUSHに入るとお客さん扱いされないが、それが私は好きだ。LUSHに入ると市民として扱ってくれる。LUSHの店舗はまるで『変革の拠点』だ。」ということを言ってくれました。対等に意見をぶつけ合える場、つまり、基本的に自分たち自身が考える場があって、その後にお客さまにどう考えているかということをオープンに聞いてみて、意見を交わし合うことに意味があると思っています。ある意味でのコミュニティースペースですね」

城宝「お客さまとも意見交換を行うのですか!?」

高橋「はい。私たちにとって、店舗は最大のメディアです。店舗に色々な情報があって、意見が集まること自体が私たちにとっても大切なことです。そして、店舗が変革の拠点でもあるんです。社会には色々な課題があるので、アプローチ方法も色々あると思います」

城宝「”変革の拠点”良い言葉ですね。そして、店舗は最大のメディアだという考え方は新しいですね。初めて聞きました」

店頭で行われているキャンペーン

店頭で行われているキャンペーン

ーjoho’s eyeー
商品を買ってくれる人を良い意味でお客様扱いしないスタイルはLUSHさんならではだと感じます。私が取り組む「テーブルクロス」では飲食店を予約すると途上国のこどもたちへ給食を届ける仕組みになっていますが、私たちが持つサプライチェーンのなかでも変革の拠点を生み出すことができたらと思いました。

後編はこちら

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