はたらく

リディラバ安部×コープこうべ 社会問題の「社会ってどこ?」

2016年9月12日 12:42 PM はたらく--エシカルな働き方

日本有数の組合員数を誇る生活協同組合コープこうべは「良心的な小売り業」から、「社会的課題を解決するトップランナー」へと舵を切る。今後、高齢化や孤独死、認知症などの地域の社会問題に対応した事業に注力していく。助け合いの精神でできた「協同組合」には、それらの課題を解決する上で、何が期待されているのか、社会的事業を行う先駆者から話を聞いていく。第二弾は、社会問題の現場を訪れるスタディツアーを企画するリディラバ(東京・文京)の安部敏樹代表を迎え、木田克也・コープこうべ専務理事と話し合った。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)
第一弾はコミュニティデザイナーの山崎亮さんをお呼びし、コープこうべの本田英一組合長理事と対談

社会的課題を解決する事業づくりについて議論した二人。木田・コープこうべ専務理事(右)と安部・リディラバ代表=コープこうべ住吉事務所で

社会的課題を解決する事業づくりについて議論した二人。木田・コープこうべ専務理事(右)と安部・リディラバ代表=コープこうべ住吉事務所で

――安部さんは2009年に、リディラバを学生有志と立ち上げました。主に社会問題の現場を訪れるスタディツアーを企画されています。

安部:リディラバは2009年に10から15人の学生有志の集まりでできた団体です。社会への無関心の構造を壊していかないと、社会問題の根本的な解決はできないと思い、社会問題の現場を訪れるスタディツアーを企画してきました。

いまでは、中学・高校生向けの修学旅行も企画させてもらい、生徒たちに、社会問題について触れてもらうきっかけをつくっています。そして、社会問題を紹介するウェブメディア「TRAPRO(トラプロ)」も運営しています。

2013年からは、ソーシャルセクター全体のコミュニティを強化していくために、社会的事業者を集めたカンファレンス「R-SIC(Ridilover Social Issue Conference)」を開いています。

社会起業家、NPO代表、CSV担当者、投資家などが集まり、ソーシャルセクターに新たなエコシステムをつくることを目指しています。

――学生有志で始めた団体が、株式化し、30人弱を雇用する経営者になりました。もし安部さんがコープこうべの職員なら、どんな仕組みで何の社会的課題を解決したいですか。

安部:そもそも社会問題を解決するときには、まず社会問題の定義について考えていくことが必要だと思っています。社会問題を特定できないと、その問題が解決した理想の状態を描くことができないですし、ほかの人たちと共有することもできません。

ですから、ぼくがコープこうべの職員ならまずは問題を特定するために、コミュニティに対して、どっぷりと入っていきたいですね。そして、社会問題について考えるコミュニティを各地でつくっていきたいなと思います。

社会的事業をつくるには、まず社会問題の定義づくりから考えていくべきと説明する安部代表

社会的事業をつくるには、まず社会問題の定義づくりから考えていくべきと説明する安部代表

木田:コープこうべの創設は1921年です。その成り立ちはおよそ次のようなものです。

当時、多くの財界人の居住地となっていた住吉村では住民同士の交流や地域の街づくりなどを話しあう社交クラブ「観音林クラブ」(今なら自治会館)が造られていました。

そこに行き来していた那須善治が事業で成功した財を社会貢献の事業に使いたいと考え、地域の中心人物であり後の文部大臣となる平生釟三郎と相談し、その頃は貧しい人たちが住む地域で宣教師をしながらボランティア活動をしていた社会活動家として知られる賀川豊彦を訪ねました。

賀川から「寄付や慈善事業にお金を使っても一時的な効果しかない。社会を根本的に良くしていくためには、暮らしを安定させ協同扶助で助け合える社会を作っていくことが大切である。そのためにも是非協同組合を作るべきだ」というすすめに基づいて「灘購買組合」が誕生しました。

一方、神戸でも造船所の労働争議を経て同じく賀川豊彦の指導のもとで労働者が協同組合を立ち上げ「神戸購買組合」が生まれました。

事業家が作った「灘」と労働者が造った「神戸」が一つになって現在のコープこうべがありますが、出発点は社会的にも経済的にも苦しい生活を余儀なくされる時代にあって、助け合い支えあう生協運動を通して暮らしと地域を良くしていこうという共通する想いだったといえます。

さらに、コープこうべが成長を続けることができたのは、女性の組合員たちが果たした役割が大きかったと思います。1924年には神戸で、1929年に灘で、女性たちの組織「家庭会」が発足しました。家庭会では、暮らしの悩みを話し合い、お互いが協力して解決していく動きを相次いで起こしていきました。こうして、生協としての基盤ができました。

安部:そうだったのですね。お聞きしたいのですが、なぜ、組合員はコープこうべで買い物をするのでしょうか。価格が安いからでしょうか。それとも、職員が親切だからでしょうか。

木田:「生協は、私たち組合員のものであること」を感じていただけるような場面が買物の中であるのかなと思います。私たち専従者はそのことをつい忘れがちになり、お叱りを受けることも多々ありますが・・・。

組合員一人ひとりから、暮らしの課題が出てきます。そして、課題が出てくるたびに解決していこうという動きが起きます。そう考えると、組合員は「コープさんに云うと少しは良くなったね」と思ってコープこうべで購入してくれているのかもしれません。戦後の「家庭会」の取り組みを象徴する「買い物カゴから社会を変える」という言葉も、そういう中ででてきたものと思います。

コープこうべは創業の精神を生かした社会的事業に取り組みたいと話す木田・専務理事

コープこうべは創業の精神を生かした社会的事業に取り組みたいと話す木田・専務理事

安部:最近では、どのような課題が出ていますか。

木田:一つひとつの具体的な課題の前に、今は組合員だけでなく、働いている職員も社会的課題の解決にどう貢献しているのか、実感できている人は多くはないのではないかと思っています。

だからこそ、4年前に次代コープこうべづくりを掲げたときは「意識改革」を最重点に取り組みました。「前例のないことはできない」から「新しいことにチャレンジする」という風土づくり、「指示待ち」ではなく「自ら考え行動する」人づくりですね。

神戸に限ったことではないですが、過去に例のないほどの高齢者の増加によって引き起こされる様々な社会インフラの不適合が問題視されています。風土づくりを進める中で、そのような社会的課題が一つひとつは点として把握できてきたのですが、今後は、点を線にして、さらには面に、そして立体的にとらえていきたいですね。

*働いている職員たちが、社会問題の解決に貢献できていると感じるためには、どうすれば良いのか?次回、安部代表がその解決策を明かします。後半はこちらから。

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