はたらく

リディラバ安部×コープこうべ 社会問題の「社会ってどこ?」(後)

2016年9月15日 11:50 AM はたらく--エシカルな働き方

日本有数の組合員数を誇る生活協同組合コープこうべは「良心的な小売り業」から、「社会的課題を解決するトップランナー」へと舵を切る。今後、高齢化や孤独死、認知症などの地域の社会問題に対応した事業に注力していく。助け合いの精神でできた「協同組合」には、それらの課題を解決する上で、何が期待されているのか、社会的事業を行う先駆者から話を聞いていく。第二弾は、社会問題の現場を訪れるスタディツアーを企画するリディラバ(東京・文京)の安部敏樹代表を迎え、木田克也・コープこうべ専務理事と話し合った。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)(*前編はこちら

2人の対談は、予定時間を超えるほど白熱した。木田・コープこうべ専務理事(右)と安部・リディラバ代表=コープこうべ住吉事務所で

2人の対談は、予定時間を超えるほど白熱した。木田・コープこうべ専務理事(右)と安部・リディラバ代表=コープこうべ住吉事務所で

安部:働いている職員が、社会問題の解決に役立っていると実感しづらくなっているということですが、おそらく、その原因は、社会問題が複雑になっているからだと思います。

木田:おっしゃるように、昔は、「食の安全・安心」のように社会問題はシンプルでしたね。

安部:ぼくは先日、ミャンマーに行ってきました。政治家や官僚とディスカッションをして、「何に困っているか」とたずねたら、彼らは一様に、「飯が食えないこと」と答えました。つまり、問題がシンプルなときは、行政も企業も動きやすい。ODAを農業支援に役立てれば良い。

でも、社会が発展していき、社会の仕組みが変わっていくと、そもそも社会とは何かという問いが出てくる。世代によって、文化が異なり、どの社会で、合意形成を取ればよいのか分からなくなる。こうなると行政の対応しなければいけない範囲が一気に広がってしまう。

社会問題を解決した理想の状態を描くことができず、その結果、自分の仕事が何に役立っているのか分からなくなっているのだと思います。

「社会問題が複雑化した今、社会を定義することが難しくなっている」

「社会問題が複雑化した今、社会を定義することが難しくなっている」

木田:安部さんにお聞きしたいのですが、コープこうべは「社会的課題を解決する事業体のトップランナー」になることを目標に掲げています。今後、どのような動きが求められているとお考えでしょうか。

安部:コープこうべの組合員と職員だけでなく、地域全体で社会問題を共有して、解決に向かう動きを起こしていくべきだと思います。

リディラバは性教育や防衛問題など、社会問題の現場を訪れるスタディツアーを約200種類企画してきました。社会問題を解決する事業を拡げていくためには、相手の文脈に合わせることが重要です。

例えば、中学校の修学旅行をスタディツアーとして企画しましたが、そのときに中学校側には、「2020年に大学入試が変わるから、その対策として」と伝えました。2020年には、これまでの知識や技能だけを評価する方式ではなく、思考力・判断力・表現力を中心に見ていくテストに変わります。

このように、相手の文脈に合わせて、フォーマットをつくっていくことが重要です。

木田:なるほど。無関心層を巻き込むためによい方法はありますか。

2人の対談を見守るように、木田専務理事の後ろには、賀川豊彦氏の写真が

2人の対談を見守るように、木田専務理事の後ろには、賀川豊彦氏の写真が

安部:ツアーで参加者を主体的にかかわらせるためには、完成したアウトプットは事前に用意しておかないようにしています。これを、ぼくらは「未完成のマーケティング」と名付けています。参加者は、旅をしながら、「現場の最新動向に関する調査」「当事者との対話」「参加者同士の意見交換会」などを行い、社会問題に対して自発的に理解を深めていきます。

木田:コープこうべには組合員が168万人います。社会的課題を解決していくために、安部さんたちのような若手の起業家とどのような仕組みがあれば、かかわりやすくなるでしょうか。

安部:最初はその気のある人だけで構わないので、組合員の皆さん一人ひとり、社会問題を解決する企画を立ててもらうのはどうでしょうか。

そして、組合員が出した解決策をブラッシュアップするために、全国の社会起業家とも連携します。社会問題別に、その分野に精通している社会起業家がメンターとして付く仕組みです。

こうすることで、コープこうべが社会的課題を解決するプラットフォームになり、プレゼンスを高めていけます。

木田:良いアイデアですね。今よりも、ますますもって組合員の皆さんに社会問題に関心を持っていただくようにしていかないといけません。既に昨年から安部さんのところで四半期に一本のペースでスタディツアーを組んでいただいていますが、頻度や中身のステップアップも考えたいですね。

安部:リディラバもこれまでは東京拠点でツアー先も東日本がほとんどでしたが、西日本、特に関西にもどんどんと領域を広げていきたいと考えています。コープこうべさんを拠点にそういったことが出来れば素晴らしいですね。

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木田克也:
1979年灘神戸生協(現コープこうべ)に入所。協同購入Cで地域担当を経て新たにスタートした組織部スポーツ振興事務局(現コープスポーツ)の業務に関わった後、組織変革を目指した組合員の声推進室、その後人事労政および企画などの人事業務に従事。2009年に執行役員、2011年に常勤理事、2015年より専務理事となり現在に至る。また、関連団体の大阪府生協連や社会福祉法人協同の苑の理事も務める。

安部敏樹:
1987年京都府生まれ。2006年東京大学入学。大学在学中の2009年に『リディラバ』を設立、2012年に法人化。KDDI∞ラボ最優秀賞など、ビジネスコンテスト受賞歴多数。現在は、東京大学で、大学1~2年生向けの「社会起業」をテーマとした講義を持つ。また、東京大学大学院博士課程(専門領域は複雑系)に所属し、研究活動にも従事している。

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