はたらく

ギター指板用の黒檀 B級材を有効活用

2016年11月7日 2:37 PM はたらく--エシカルな働き方

1974年創業の米・テイラーギターズは、ギター/アコースティックギター分野で全米トップのシェアを誇る。2016年度の売上高は105億円を見込む。指板に使う黒檀が枯渇していく状況に、これまで捨てていたB級(茶色や白黒の縞模様)をA級(真っ黒)と同価格で買い取り、木材を余すことなく使い切る製造方法に切り替えた。創業者のボブ・テイラー氏に、資源危機をブランディングにつなげた方法を聞いた。(聞き手:オルタナS副編集長=池田 真隆、写真:福地 波宇郎)

サステナビリティを追及するには、経営者としての意思決定ができることが何よりも大切と強調

サステナビリティを追及するには、経営者としての意思決定ができることが何よりも大切と強調

――2011年に、スペイン系企業と合弁でカメルーンの木材加工工場を買収しました。違法木材を排除して、B級でもA級と同価格で買い取ることに決めました。このような経営判断はどのようにして下せたのでしょうか。

ボブ・テイラー(以下ボブ):買収しようと思ったのは、合法の黒檀を使いたいと思ったからです。米国では、2008年に絶滅危惧種の輸入を規制する改正レイシー法が成立しました。この法律が通ったときに、アフリカのサプライヤーは信頼できないと真っ先に思いました。

ギター作りにおいて、黒檀はものすごく貴重な材です。たとえ、現地のサプライヤーが合法だと言っても、本当にそうだろうかとひっかかるところがありました。だから、本当に信用するためには、実際に行き、自分たちで工場を所有するしかなかった。

ですが、工場に行ってみたら、そこで働く従業員には一刻も早く助けが必要だと分かりました。助けとは、経済的な支援と技術的な支援のことです。

現地の人たちの生活レベルはあまりにも貧しかった。そして、木の切り方についても改善が必要でした。木は切っていますが、植えていませんでした。

この2つを優先的に取り組み、その後、合法的に切れる木だけを切るように指示しました。しかし、このことは口で説明すると簡単に聞こえますが、最も難しいことでした。非合法な木を切ることが横行していましたからね。

年月をかけて、何度も何度も従業員とコミュニケーションを取り、コンセプトを伝えていきました。サステナブルな価値観を浸透させるには、自分の感覚で理解しないといけません。

米国から来たあいつにとっては大事かもしれないけど、家族を食わしていくことが最も重要と考えている従業員は少なくありません。彼らに、一方的に、「この木を切るな」と伝えても意味がない。

しっかりと人間関係を築いて、納得してもらうしかない。工場を買収して5年経ったが、今は問題なく、従業員も理解して、信じてくれている。

工場には年に5回、2週間半ほど訪れる

工場には年に5回、2週間半ほど訪れる

―信頼し合うにはお互いが納得するまで話し合うことが必要ですか。

ボブ:もちろん。現地に定期的に訪れて、交流することは不可欠です。ですが、大事なことがもう一つあります。それは、そこで働いている人のモチベーションを高めることです。

適正な給与を支払い、職場環境などを整えることも大事なプライオリティーの一つです。工場に行って気付いたのですが、働いている人たちの扱われ方がひどかった。ぼくら米国人や日本人などは平均的に考えると、裕福な富を持っています。忘れてはいけないのは、その富をシェアすること。地元でもお金が周るようにすることが大切です。

――B級の黒檀をA級の価格で買い取っています。それまで黒かったギターの指板が、茶色になることで、消費者は離れていきませんでしたか。

ボブ:黒檀の枯渇が迫っているのに、そもそもギターの指板が黒くないといけないということはどうでもよい話です。ぼくらはギターのサステナビリティを追及したので、木を全部使い、木を切るスピードを遅くしないといけなかった。

ぼくらのメッセージを消費者に伝えたとき、多くの人が受け入れてくれた。その証拠に、テイラーギターズのユーチューブチャンネルでは、ぼくが話している動画が最もPVが高い。

消費者だけでなく、ビジネスパートナーにも隠さず伝えている。日本での販売代理を務めている山野楽器の山野政彦社長が工場を訪れたとき、黒檀の種を植えている芝生に案内した。その芝生は、虫食い状態でひどかった。

一般的に考えると、サプライヤーにこのような芝を使っていることは怖くて見せられない。でも、ぼくらのミッションは木をすべて使い切ること。ぼくらのメッセージが伝わり、山野社長からは、日本で販売できることに誇りを持ったとメールをもらった。

会社のトップがしっかりとした倫理観を持ち、自分の言葉でメッセージを伝える姿勢を見せれば、ステークホルダーは必ず反応してくれる。

ぼくの仕事は、消費者たちが望む未来へ引っ張っていくこと。消費者に背中を押されて、そこに行くのではない。

なかには、消費者は欲しがっていないと決めつけ、消費者の影に隠れてしまう経営者もいる。でも、ぼくは、「こっちに行こうぜ」と言うのがリーダーの役目だと考えている。

黒檀の種は柿の実のようになっている。調査の結果、実を割って1日以内で植えないと育たないことが判明した

黒檀の種は柿の実のようになっている。調査の結果、実を割って1日以内で植えないと育たないことが判明した

――サステナビリティを追及すると、「利益が取れるのか」と株主から反発に遭うこともあります。サステナビリティと利益の二兎を追うために心がけていることは何でしょうか。

ボブ: ぼくらは木を使う会社なのでアドバンテージがありました。サステナビリティを全面に押し出すことで、自然とブランディングが高まりました。ギター業界は、木を植えず、大量に消費してきました。現実問題、100年後もギターを作るには、木が必要です。

木は成長するまでに時間が掛かるので、今植えなくてはいけません。だから、ぼくらが今取り組んでいるプロジェクトは、ぼくが死んだ後に、形になるものばかり。ようするに何をトレードオフするのか、です。未来のことを考えるのなら、短期的な利益を妥協することは当たり前です。その前提に立って、予算を組むのです。

私は妻と資金を出し合い、UCLA大学などと連携し、黒檀の調査を進めています。黒檀の植樹について研究していますが、テイラーギターズからは出資していません。長期的な投資に関しては、この会社でできないと判断したので、個人で資金を出すことにしました。

もし企業がサステナビリティを追及するようになり、利益が落ちるというのなら、それが本来の利益なはず。その分の上乗せられた利益はどこかから盗んできたお金。今の時代、経営者はこういう発想にならなければいけない。

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ボブ・テイラー:

1974 年 “アメリカン・ドリーム” という名のギターショップでの同僚カート・リスタグと共にテイラーギターズ社を創業、テイラーと名のつくギターを作り始める。その後40 年以上の間を経て、アコースティックギター会社を育て上げた20 世紀唯一のアメリカン・ルシアー(ギター製作者)となる。現在ではギター制作をアンディ・パワーズに任せ、音楽を愛する未来の世代のためにトーンウッドの供給を保護するべく、新しい森林再生モデルを含む、持続可能性に関する更なる取り組みを行っている。

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